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- Re: welcometo heaven 天国へようこそ:十章完成 ( No.72 )
- 日時: 2011/09/13 21:26
- 名前: 王翔 (ID: gT4Hbmrj)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
第十一章
レンが時計を持ってくると、宮殿へ赴いた。
大広間に行くと、椅子に腰掛けているセイラの姿があった。
「ああ、こんにちは。それで、証拠は見つかりましたか?」
「見つかった」
俺は、セイラにレンとレンレンのデジタル時計を差し出した。
セイラは、それを受け取ると、笑みを浮かべる。
「では、証明を始めますか。どうでしょうかね? 同じ時間で止まってなければいいですねぇ」
明らかにそうは思っていなさそうな態度で言うセイラ。
つくづく見てて腹が立つ奴だな。
「まあ、私はのんびり結果を待ちますか」
いつもの通りの声音で、平然と呟くレン。
特に変わった様子は見られないが、間違いなく気になっているはずだ。
生前に、一緒に心中するほど愛したレンレンと同時に死んだのか、死んでないのか証明されるんだから。
レンは、恐らく絶対に何かを気にしていても顔に出さないタイプなんだろうなと思う。
「では、始めますか」
フッと明かりが消え、真っ暗になる。
「……っ!」
思わずラファンにしがみついた。
「瀬座?」
「あ、悪い……。誤作動だよ」
そう言って離れる……けど、やっぱりぴたりとつっくいてしまう。
「もしかして、恐いの?」
「なっ……! べつに、恐くなんか!」
「そっか」
ラファンは納得したように頷くと、急に歩き出す。
慌ててしがみついてしまったのが失敗だった。
「や……離れるなバカ!」
「やっぱり恐いんだね」
「…………」
もう巻き返せる自身がない。
とにかく話題を切り替えるため、セイラに声をかける。
「早く、証明しろよ!」
「あ、そうですね」
「……何だよ……」
「いえ、いい気味だなぁと思ってまして」
「うるさいっ! 早くやれよ!」
「はいはい、分かりました」
セイラが両手を広げると、時計が宙に浮く。
時計が青白い光に包まれる。
そして、二つの時計の上にそれぞれ数字が表示された。
十四時三十三分と、十四時三十四分。
一分だけずれている。
「よし!」
俺は、両手で握り拳を作った。
部屋が明るくなり、セイラがため息をつく。
「仕方ないですねぇ。では」
セイラはレンの方に手を向ける。
レンの身体が光に包まれる。
そして、レンとその隣には……十四、五歳ぐらいのツインテールの少女がいた。
「え……? もしかして、レンレンか?」
「はいですよ。瀬座、ありがとうなのですよ」
レンレンは、にっこりと微笑む。
確か、負担を減らすために小人になってる言ってたな。じゃあ、今はもう負担はないから人の姿に戻ったってことなのか。
「久しぶり、ですね」
レンがレンレンに声をかける。
今まで見たことのない、優しい表情をしていた。
「お久しぶりなのです。これから、よろしくなのですよ!」
「はい、こちらこそ」
「ああ、最後に……二人に注意を」
セイラが口を開く。
「兄弟同士の恋愛は、ここでも認められません。以上です」
「なっ!」
思わず目を見開いた。
せっかく二人別々になったのに、これじゃ……。
「分かりました」
「な、何でだよ!?」
「瀬座、いいんですよ。こうして別々になったことで、話すこともできて……そして、ようやく諦められますから」
「それで……いいのかよ……?」
「いいのですよ。私もレンと同じなのです」
「……バカじゃないかぁ……」
気づけば、情けなく涙を流していた。
「どうして、瀬座が泣くんですか?」
「分かんないのかよバカあ……」
「瀬座は、とっても優しいのですね」
レンレンが笑顔で頭を撫でてくる。
「また、新たな出会いもありますからね」