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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.8 )
- 日時: 2011/08/23 08:35
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第八章
俺は、ラファンと薄暗く不気味な森の出口を目指して歩いていた。
じめじめした空気のなか、木々が目の前を覆いつくしていた。
「瀬座」
「な、なんだよ?」
ラファンは、いつになく真剣な表情をしていた。
いや、べつに驚いてないんだからな。
「もう、レンの家には行かないでね。危ないから」
「あ、ああ」
俺はこくりと頷いた。
まあ、確かにラファンの言う通り近づかない方が身のためだな。
欲しかった情報は手に入ったわけだし、もう用はない。
「本当に、無事で良かったよ」
ラファンは優しい表情で俺の頭を撫でながらそう言う。
「なんだよ……」
べつに、照れてないんだからな。
俺は早足で歩いた。
「それにしても……死者は生きてる人間には勝てないから、辛いよね」
「え?」
唐突なラファンの言葉に俺は思わず首を傾げた。
「家族なら、覚えてるだろうけど、それ以外の人はどうだろう……」
「何で…」
「大体の人は、ほんの少しだけ会った名前も知らない相手のことなんて時間がたてば忘れる。こっちが、いくら好きでも、死んだらそれ以来、会いにいくことができずに、忘れられる」
「…………」
「でも、生きて目の前にいる人のことは忘れないしね。生きてる人には勝てないんだよ」
そう語るラファンの表情は、少しだけ悲しそうだった。
ラファンにも好きな人……ずっと自分のことを覚えていてほしい人がいたんだろうか……。
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