ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 1。 ( No.2 )
- 日時: 2011/07/25 12:51
- 名前: 左倉. ◆BbBCzwKYiA (ID: mtlvkoR2)
- 参照: http://フルスマイル!
いま自分の目の前にいる少年はきっと異常者と呼ばれる存在なのだろう、と本能的に気付いた。
少なくともわたしは、こんな時ににこにこしながら菓子を食べている人間を、いままで見たことが無かったから。
因みに、今現在のこの場所は俗に言う殺人現場。平凡な生活を送っていた女子高生である私が、当然血まみれになった人の死体なんてものを見て平静でいられる筈もなく、現在進行形で腰が抜けていたりするのだがそれは置いておいて。
そういえば、何故彼はこんな所にいるのだろう。
今私と彼(あと死体)がいるのは猫も通らないような暗い路地裏。私がここを通ったのは単に家に帰るまでの近道だから。彼の家は時折見かける姿の行く方向からして逆のはずだし、ここら辺はほぼ住宅街しかないので買い物に行くというのもない。ならば誰かに会いに行こうとしていたのか。……否、私はこのクラスメイトでもある少年が極端に友人と言える人間が少ないことを知っていた。
……本当に、どうして。
「……ねえねえ、」
にこにこ。
血に濡れた死体のある場所に立っているにしては、あまりにも無邪気過ぎる笑顔を浮かべたままで彼は口を開く。
「……「これ」って、美味しいかな?」
……何が?
思わずそんな間抜けな言葉を吐き出しそうになったが、目の前の少年が指しているのは紛れもなく足元にある血まみれの死体で。
私が彼の質問に返答すべきかどうか迷って金魚のように口をパクパクさせていると、不意にしゃがみ込んだ彼は、まだ乾ききっていない血を指で掬いあげて、ぺろり、と舐めた。……舐め、た?
「……え、」
「……やっぱり不味いなぁ。」
いや当たり前だろ、とまだ若干赤い液体の残る指を見てそう言った彼に突っ込みたくなった……いや、そうじゃない。……彼は、今何をした?
思わず現実逃避しそうになる頭を落ち着かせて、今の状況を冷静に分析する。
……そう、彼は、人の血を掬いあげたその指を、さも当然のように舐めたのだ。
「なに、やって、」
「人間ってさ、不味いよね」
私がやっとのことで絞り出した言葉を無視して、先程とまったく変わらない無邪気さで、異常者は続ける。
「だからおれって、人間はあんまり好きになれないんだけどさ、」
くるくる。
笑顔で喋り続ける彼の手の中で、棒付き飴が回る。それがとてつもなくゆっくりに見えた私は、もしかしたら目まで駄目になってしまったのかもしれない。
「だから、君には少しだけ感謝してるんだ。」
………え、
今の状況で、ほぼ初対面にも近い私に彼がどこをどう感謝する要素があるのか理解していない私に、彼は最初と全く変わっていない笑顔のまま告げる。
「だって、おれがどうしても好きになれないモノを、一つだけとはいえ減らしてくれたんだから」
ああ、そういえば、この死体を作ったのは私だったのか。
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1話目からわけがわからないよ!