ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

3話。 ( No.7 )
日時: 2011/08/17 21:55
名前: 左倉 ◆BbBCzwKYiA (ID: mtlvkoR2)

「ほら、だってヒトって不味いじゃない」
「だからおれは、人間がどうしても好きになれない。むしろ嫌いな方なんだけどさ」

そんなおれが好きなものは、大半が人間の作ったものなんだから変な話だよね。
常に(少なくとも俺が見ている時は)笑顔を浮かべているこいつにしては珍しく、ただ淡々と、無表情で言った言葉は、最早口癖のようにもなっている彼の持論であり、いつも甘いもののことしか考えていない(これは俺の独断と偏見だが、あながち間違ってもいないと思う)こいつにしては珍しくずっと考えていることの一つらしかった。
まあ、今度は昼飯代わりに棒つきの、所謂ペロペロキャンディーと呼ばれる飴を舐めている男子学生に言われても何の緊張感も無かったし、それまでのぐだぐだした、学生特有のだるい空気が変わることも無かったわけだが。

「……で?」
「それだけ」

俺の問いにあっさりと一言で返事をして、やっぱり如何にも甘ったるそうなキャンディーを舐めて、珍しく無表情だった彼の顔はこれまた珍しく「楽しそうな」笑顔に変わる。端から見たら違いは分からないのだろうが、少しよく見ればすぐ分かる。今のこいつは、いつもの心底嬉しそうな笑顔ではなく、……そう、まるで漫画やらアニメやらに出てくる敵の参謀のような、とても嬉しそうな笑い方(分かりづらい言い方だが、それしか例えようがなかった)をしていたのだ。

「でも、人間が甘くなっちゃったらそれはそれで嫌だなあ」

すぐにその笑顔を消して、またいつもの笑顔で笑うクラスメイト兼友人。
それだけ、と言った癖にやっぱり続けるこいつに少し呆れ混じりの溜め息をつきながら、内心ではこの友人の言った言葉に少し驚いていた。……こいつにも、人を食べるのは駄目だという常識的な思考があったのか。
これは決してこの友人を狂っていると言っている訳ではなく、続けて見せられた(少なくとも俺にとっては!)衝撃的な光景に少し頭が混乱してこいつをとても非常識な人間のように思っていたからだ、……多分。

「だって、多すぎて食べるの面倒くさいもの」

……前言撤回。この、俺の目の前で飴を舐めている男子学生は相当おかしい。どこかどうおかしいのかと聞かれても、それは上手く説明できないだろうが。
……やっぱり確かに、こいつはおかしい。




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3話っていうより間話みたいになった。
短い……