ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.42 )
- 日時: 2011/08/24 09:49
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: B1rykyOu)
入れ物……。 そんな、そんな扱い?
殺されるのではなく、肉体を引き剥がされた……? 許せない。
「何の真似だ?」
サタンはそれを見て、恐怖をその顔に浮かべる。
サタンの視線の先には、彼女の掌……の、上。 青白い炎が、渦を巻いていた。 それは蛇のようにとぐろを巻き、眼球のような部位をぎょろりとサタンへと向ける。
意思があるわけが無い。 魔術に、意思があってなるものか!
魔術は、魔力によってもたらされる現象……魂を生み出す事などできない! 魔力だけでは、魂の代わりなど成りえない!
……なんて……女だ。
「いや、君の魂を……焼き尽くす。 彼がもう、この世に居ないと知った以上、彼の身体ももう、この世には必要ない。 私の前から……消えて失せろ、大魔王!」
アリソンが目を見開き、炎は蛇の頭であろう部位がサタンに向く。
舌を出し、サタンの様子を探っているのだろうか? 沈黙の後、ついにその蛇が牙を剥く!
頭からサタンに猛突し、今しがたサタンの頭のあったところに噛み付くが、サタンはそれを紙一重で避ける。
頬に一筋の火傷を負うも、毅然としてその場に立っていた。
「私を殺すとは……千年早いぞ? そうだな、気が変わった。 貴様の性能を試してやろう!」
その言葉と同時。 彼の頭の皮を突き破り、水牛のような角が突き出した。
右目の下に、二筋の黒い古傷。
「この男の器でなくとも、本来はよかったのだ。 魔力を無効化する体質など、探せば出てくる。 ……だが、この男だけだったのだ。 鬼の血を引く……東方の妖力を得られる肉体は、この男のほかに誰もいなかった」
黒い角。 それは、明らかに人ならざる何かの象徴。
角を出現させてから、明らかに周囲を取り巻く空気が変わった。
どろりとした、悪寒を感じるような嫌な空気。 粘液の中に居るのではないかと錯覚するほど、それは嫌によく感じられる。 覚えの有る、あの感覚。
大神の、妖力を展開したのと、全く同じ!
次の瞬間、彼女は自分の足が地面を離れた事を知る。
そして……気付けば、ダメージと大量の出血。 知っている、この力……神通力だ。
それも、相当強力で避けようがない。
「成……程……。 力の肥やしでしかないのか、その身体は」
「ああ、この男の魂などいらぬ。 命により魂は働き、魂によって精神を通じ、肉体を動かす。 本来であれば、魂など不要なもの。 貴様にくれてやっても構わぬが……ラグナロクが近いのでな。 魂の記憶を消し去り、我が駒の一つとして使うのだ」
そうか。 駒の一つに……させてたまるか!
けど、認めるしかない。 私が不死身で死ななくとも、この男の方が格上。
あの蛇は、相当な量の魔力をつぎ込んだ。 駆動も、最高速度での動き。 それを、上半身をそらしただけで避けきるなんて、簡単に出来る芸当じゃない。
それに、この男……神通力で吹き飛ばすという魔力ではなし得ない行動を取ったにもかかわらず、あの威力で息一つ切れていない。
魔力以外の体内エネルギーを体外で扱うのであれば、相当量の体力も消費する。 その体力の消費が、この男には見られないのだ。
仮の器だから? いや、それを考えてしまえばこの男……自分のものでもない身体を当然のように操っている。 慣れているのか、あの蛇を避けたほどだ。
相当な体術と、相当な魔術に体力。
……悔しいが、スペックが違いすぎる。
