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Re: 大好きだった君へ無様に生きた私より ( No.51 )
日時: 2011/08/28 15:20
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: B1rykyOu)

 「友人とは、友人になってくれと頼んでなってもらうものではないと思う。 だから、私は君とは友人になったわけではないよ。 私は、先を急いでいるんだ」

 アリソンは、ベッドから立ち上がると全身を電撃のように駆け抜ける激痛に襲われながら、その足で立ち上がって見せた。
 そして、周囲を見回し、ベッドの横に立てかけてあった剣を手に取ると、ドレスの上から腰に巻く。 そして、

 「私の服は何処? コートとか、ズボンとか……」

 自分の服の存在を思い出した。 それと同時に、何故ドレスを着ているのか? という疑問も彼女の頭に浮かぶ。

 「服は——」

 が、その答えはクローセルやリーチェの口から出る以上に早く、彼女の頭の中に浮かんだ。
 サタンに、殺されたとき。 恐らく、あの炎で消し飛んだんだ。

 「理解した。 私がサタンに殺されたときに、体ごと消し炭か……。 ドレスでは面倒だが……仕方が無い。 それよりも……クローセル。 君に聞きたいことがある」

 アリソンは、クローセルをその灰色の瞳で見据える。 そしてそこで、もう一つの異変に気がついた。
 彼女のその長い黄金色の髪が、銀白色へと色を変えていたのだ。 それを見て、彼女自身。 一度自分が死んだことを確信した。
 この魔術は、彼が死んで以来変わり果てていく自分を無理にでも隠そうとした結果だ。 私が死ぬか、本体から切り離されれば、魔術は効力を失い、解ける。 
 本体から切り離されたわけではなければ、一度死んだという証明。
 あの夢は……現実。 ……だからといって、既に終わったことに落胆する時間も惜しい。 今は、自分の目標を見据えるんだ。

 「……夜叉、という刀を知らない? 私は、どうしてもそれが必要なんだ……」

 アリソンの問い。 特に、クローセルに期待はしていなかった。
 だが、クローセルは少し考え込み、

 「紅の塔の地下に、“知の神”を封じた黒い棺がある。 数百年以上昔から伝わる、御伽噺……伝説だ。 棺の中の紙を押さえるため、黒い神刀が突き刺されてるらしい。 ただ、紅の塔の扉が開いたのは今日の昼過ぎ。 君が出てきてからだ。 その神は、龍を呼び寄せる力があったらしい」

 この文明を築いた地域を、神が人間に与えたという事か? 
 つまり、オーバーテクノロジーを得たこの文明の発生源は、その神。

 「何故、神は封じられたの……? 知恵を人間に与えた。 なのに……」

 「そのときの王様が、神様を嫌って、国一番の魔術師を呼び寄せて殺したって伝わってる。 それで、その神様の入った棺桶を地面に埋めたら、一晩であの塔が出現したとか何とか。 今一、脈絡が無い話だが……行って見る価値はある。 どうする、今から行くか?」

 クローセルの問いに、彼女は静かに頷いた。


                  Capitulo Ⅳ 『彼とはコインの裏表』 END

                    Capitulo Ⅴ 『機械仕掛けの騎士の塔』