ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 脱出ゲーム  ( No.52 )
日時: 2011/08/08 09:54
名前: 道化師 ◆tZ.06F0pSY (ID: OXTNPTt9)


「———だ、誰かいるのか!?」


僕は皆とその部屋の奥からした物音との間に立った。
僕が鋭くそう言うと、倉庫の奥から誰かが置き上がった。




≪ 第4話 追加ルール ≫




「ってぇ…っ、ここ——何処だ?」

倉庫の奥から顔を出したのは、一人の青年だった。
黒髪に、茶色の瞳———鋭い眼つきは、僕を射るかのようだ。

「…誰?」

僕は顔色を窺うように顔を覗き込みながら、彼に尋ねる。
するとギロッと睨むように彼はこちらを見たけど———


「ん?ああ、俺か。 俺は、紀ノ川 楔ってんだ。 よろしくな」


声色は陽島ほどは刺々しくはなく…だが、それでも人を寄せ付けない雰囲気をほのめかせていた。
そして彼は辺りをぐるっと見渡すと、もう一言。



「…ここはどこなんだ?」



「……」

その声を聞いて、僕たちは顔を見合わせた。
そう——彼は今気がついたばかりらしい。

僕は自分の携帯電話を彼に見せると、彼は自分の携帯電話を取り出した。
そして間もなく、あの2件のメールを見たのだろう———酷く顔を歪ませていた。





 * * *





風間は深い溜息をついていた。


不二磨 悠氏という1年———相当な馬鹿らしい。
奴も見た筈だ…あの写真を。
そして一度、紅服の男に追われて、そしてなお女のもとへと去った。

何故なんだ?俺には分らない。
あの男のしたい事が分らない。


「…荒れてるな、生徒会長?」


するとそこへ、ゆっくりと誰かが歩み寄った。
さっきまで部屋にいなかった男だ。



「黙れ榛原翔平…その減らず口を閉じろ」



すると風間は、その男に向かって吐き捨てるようにそう言った。
榛原翔平…そう呼ばれた男は苦笑を浮かべて風間の側に歩み寄る。


「…あんたも相変わらずだな。
 気に入らない事があればすぐ周りにあたるってのは止めた方がいいぜ」
「フン、生憎俺は貴様より断然器が小さくてな」


…、
やれやれ、俺の言いたい事をまるで分って無いな————

榛原は風間の言葉を聞いて、再び苦笑を浮かべる。
自分に似ているというか何と言うか、風間はすぐ自分に対して皮肉を言うものだから、人の忠告をまるで聞こうとしない。そんな風間と俺で唯一違う事を上げるとしたら、風間は仲間意識という物が無く、人を駒としてしか見ていないという点だろうか。


「———…それよりも榛原、紅服の男はどうだ」

すると、そんな事を考えている時…風間が黒縁の眼鏡越しから俺を見据えてそう言った。
ちなみに…風間の言葉の意味はそのままである。



「あぁ、あんたに言われて紅服の男の動きを追っていたが——
 あいつの動くルートは大体一定してた。若干規則性があるな、アンタの言う通り…」



俺は目が覚めて、まず始めにこの男と出会った。
風間は俺が起きる1時間くらい前から行動しているらしい。

一時間くらい前…だが、それは感覚でしか無く、実際はどれくらいの時間かは浅はかではない。


というのも、携帯電話の時計、中庭の時計、それぞれの教室の時計———
全てが真夜中の0時00分から動かないためである。


風間はまず、メールを読みとり、紅服の男を監視する必要があると言っていた。
風間はほかに誰かいないか見回ると同時に、今自分たちが置かれている状況の把握をすると言い、
俺に紅服の男の動きを監視するように言った。


それでずっと紅服の男の様子を監視していたのだ———

「南校舎一階から北校舎一階、北校舎二階、南校舎二階、南校舎3階、北校舎3階、そして北校舎1階で、南校舎1階…大体こんな感じだったか」
「そうか…」

風間は俺の言葉を聞くと、小さく嘆息した。
だが、その時風間は———笑っていたのである。

俺は思わず風間を見て、何故笑うのか尋ねようと口を開きかけたが————


〜♪〜♪〜♪

その時ちょうど、あの着信音が鳴った。

「おい、榛原…マナーモードにしろと言っただろう…着信音で居場所がバレたらどうするつもりだ」
「あ、悪いな…っと」

俺は素早くマナーモードに切り替え、画面を開いた。





件名:追加ルール




「楽しくなりそうだな、コレは」
「…気味の悪い事を言うなよ、あんたコレを何かのゲームかと勘違いしてるだろ」

俺は本文を読み終えると、そのルールの気味の悪さに携帯電話を閉じてポケットに押し込んだ。
だが、それでもなお風間は楽しそうに笑っていた。





まるでこの状況を楽しんでいるように見えたが、俺はあえて何も言わなかった。