ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 脱出ゲーム  ( No.63 )
日時: 2011/08/10 16:16
名前: 道化師 ◆tZ.06F0pSY (ID: OXTNPTt9)

追加ルール



風間はそのメールを見て笑う。
だが、彼は決して“ルール自体”に楽しさなど感じてはいなかった———





≪ 5話 四面楚歌 ≫




体育館倉庫にいるのは、僕と真、葉峰に十六夜と…紀ノ川。
その4人の携帯電話のバイブ音が鳴ったのは、ほぼ同時だった。

「…今度は…何?」

真は血の気の引いた青白い顔で自分の携帯電話を見る。
葉峰と紀ノ川も分が悪そうに苦い表情をしている。
僕も同じ表情を浮かべているのだろう…

だが、唯一十六夜は涼しい笑顔を浮かべていた。


「どうしたのみんな、見ないの?」
「お前…またあんな写真が送られてきてたら…」


僕は涼しげな顔をして言う十六夜に、そう言い返した。

…十六夜は怖くないのだろうか?
あの女の子の…惨殺された姿を見て…


僕が不安そうな表情で見ると、彼女はすでに携帯電話を開いていた。
そしてまたあの涼しげな笑みを浮かべる。


「…ふふ、もしもこのメールが一件目のメールにあった“追加ルール”ならば…
 この状況を打開できる可能性があるかもしれないのよ?」


そして彼女は携帯電話の画面を僕等の方へと向けてきた。
メールトレイに一件メールが届いている…



件名は、 “追加ルール”———————



「なっ…?追加ルール!?」


僕はそれを見て、慌てて自分の携帯電話を開いた。
確かに…僕の所にも、同じ件名のメールが届いている。

「……」

僕が視線を上げると、真、そして葉峰がこちらを見ていた。
僕等は目を合わせて、頷いた。そして自分たちのタイミングでそのメールを開いた———





件名:追加ルール

本文:外の時間で2時間が過ぎた頃だろう、これより追加ルールを言い渡す。

   【追加ルール1、ミッションのクリア】
    今から簡単なミッションをこなしてもらおうと思う。
    ミッションは全部で10個ある。
    これは絶対ではないが、クリアしない限り学校からの脱出は不可能だ。

   【追加ルール2、殺人ルール】
    自分以外のゲーム参加者の1人を誰にも「密告」されず殺したらその者の脱出許可を与える。
    だが、殺人を行って一定の時間内にこちらに「密告」があれば、殺人者に死んでもらう。
    なおこのルールの実行については各自の判断に任せる。

   【追加ルール3、密告】
    上記2のルールに従って殺人を行った犯人をこちらへ密告すれば、
    密告した者の脱出許可を与える。
    だが、間違った犯人を密告した場合は密告者に死んでもらう。
    密告はこのメールの送信元に送る事で成立するものとする。
    なおこのルールの実行については各自の判断に任せる。


「…は?」

僕はこのメールを読み終えると、携帯電話を握りつぶしたくなるほどの苛立ちを覚えた。
何なんだこのふざけたルールは…!
コイツは僕等に…何をさせたいんだ!?


「いっ…いやっ!何なのコレ…何なのよ!!」


僕が驚愕していると、メールを読み終えた真が震えた声でそう呟いた。
僕が顔を上げると、真は僕に抱きついて来たが…僕は彼女に何も言えなかった。
十六夜と目線が合うと、十六夜は無言のままきょとんとした顔でこちらを見てきた。
メールを見てもなお、彼女は動じていないようだ———

「………」

葉峰も読み終えたようで…一瞬難しい顔をしたが、パッと明るい表情になる。


「こんなん、もちろん追加ルール1に従うに決まってるやん!皆もそうやろ?」

「そう…だよな」


僕は葉峰の問に、頷いた。
真もそれを聞いて、少しだけ表情を和らげる。


「皆、ミッションするよね!?うん…そうだよ…しない訳無いもん…」
「そうやって!な?皆前向きに考えよっ!」


だが、その中で紀ノ川だけが。
冷たい声で、一言———呟いた。



「つまり…俺もお前等もその気になれば人を殺すかもしれないってことか…」