ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 脱出ゲーム ( No.66 )
- 日時: 2011/08/10 17:37
- 名前: 道化師 ◆tZ.06F0pSY (ID: OXTNPTt9)
「…、え…?」
僕は紀ノ川の言葉に耳を疑った。
”その気になれば人を殺すかもしれない”
そんな事ある訳無い。そんな事ある訳ないだろ…!
だけど僕は、それを断言する事は出来なかった。
≪ 6話 裏表の欲望 ≫
「————じゃあもうここに用は無いな…お前等、他のゲームの参加者はどこにいる?」
紀ノ川は少し続いた静寂の後、声のトーンを変えずに僕等にそう問うた。
僕はその声にハッとして、慌てて口を開く。
「校舎に…南校舎2階の教室に———生徒会長とあと数人誰かいたけど…」
「どこの教室だ?俺達もそっちに行くぞ」
『なっ…?』
僕はこの人の言葉に耳を疑った。
さっき誰かが人を殺すかもしれないって言ってたくせに…!
それに、動けば紅服の男に見つかるリスクが—————!!
「む、無茶だっ!今動いたら危ないだろ!?」
「低知能が黙ってろ、お前の意見は聞いてねえ。
———それともお前、そいつ等と敵対するつもりか?」
「あぁ、なるほど。そう言う意味かぁ」
すると紀ノ川の話を聞いていた十六夜が口を開いた。
僕等は口論を止め、十六夜の方を見る。
すると十六夜は、涼しい笑みを浮かべたまま、言った。
「確かに、グループで固まってたら密告されるリスクが大きくなるから、
グループで固まってさえいれば、誰も殺人なんてしない。
…でも逆に、自分たちの側にいない人は、自分を殺しに来る可能性がある。
だから自分の近くにいない人を敵対視するのは自然な流れ。
だったらいっそ、敵対される前に自分たちがあっちのグループにひっついちゃえばいいって話ね」
「…少しはまともな奴がいたか…そう言う事だ、お前等も来い」
…十六夜の話を聞いた紀ノ川は、少し意外そうに笑った。
十六夜は「そう言ってもらえて光栄よ」と言って、笑っていた。
「…あの、あれってどう言う意味ですか…?」
僕は何となく話が分らず、十六夜に耳打ちして尋ねてみた。
すると十六夜はフフと笑って、僕と真、葉峰にこう言った。
「…あの人は怖がりなのよ」
「怖がり…?」
「そ、自分が殺される可能性を消してるだけなの。
だからわざわざ私達まで連れて行く気なのよ…対立するグループを減らす為にね」
僕はそれを聞いて余計に混乱したが、十六夜はやはり———笑っていた。
そして僕等は結局意味が分らなかったけど、紀ノ川について行くことにしたのだった。
* * *
正直あたしでも、風間の笑みを見てゾッとした。
まるであたし達に殺人する事を求めている様な追加ルール。
森本に京乃、そしてさっき現れた——榛原という男。
あたしたち4人が驚愕して顔を真っ青としている中、アイツ…風間だけは笑っていた。
「…頭でもおかしくなったか?まさかお前ルールに従おうってハラじゃないだろうな」
「陽島とか言ったか?フン…そんな訳無いだろう」
だが、風間はあたしの問に対して、大して興味無さそうに言った。
「俺は前のメールとこのメールとでえらく口調が変わったと思ってな」
「あ…!言われてみればかなり違いますね…」
すると今度は森本がハッと気付いたかのように言う。
あたしは思わず一件目のメールを開き、確かめた。
…違う。
確かに明らかに違う———!
「…、
————で、何が言いたいんだ」
あたしはそれを確かめて携帯を閉じた後、風間を睨みながら言ってやった。
正直男と話す事自体、虫唾が走る程嫌だけど——状況が状況だから我慢するほかは無い。
すると風間は嘲笑を浮かべて、眼鏡越しにあたしを一瞥した。
「貴様、そんな事も分らないか?
では仮に、貴様はあのメールと今回とのメールを見て、メールの送り主が同一人物とでも思ったか?」
「…!」
…そうか。
つまりこの男—————メールの送り主が、このゲームの黒幕…つまり司会者が———…
「風間生徒会長…まさか貴方————」
「…黒幕が、2人以上いると言いたいのか…?」
そう森本とあたしが尋ねると、風間は笑った。