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- Re: Cheap(チープ) 第一話更新 コメ求む! ( No.6 )
- 日時: 2011/08/24 14:17
- 名前: 風猫(元;風 ◆jU80AwU6/. (ID: 68i0zNNK)
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Cheap(チープ) 〜第一話「再開」〜
正直、あいつ等と同じ高校に通うなんて思ってなかった。
驚いたよ本当に……合否を見るために高校に足を運べて自分の番号を探してたらあいつ等の名前が有った。
紅木咲の野郎は、「すげえな! やっぱ、幼馴染の友情パワーってやつだぜ!」とか、下らない事を抜かすだろうな。
あの時は、奇跡って奴の存在を始めて確信したね!
憎くて仕方ない俺の刹那を寝取った紅木咲の野郎と俺の愛する刹那が居る。
震えたね……絶対に超えられない壁を見せる事が出来るって。
俺は、小四の二学期中旬頃に親父の研究の都合で故郷、沢渡町から東京に引っ越す事になったんだが……
それ以来、五年近く故郷に足を運べる事は出来なかった。 その間も、ずっとずっと思い続けたんだあいつの事。
大好きな刹那の事。 遠く離れているのにだって? 違うさ。 遠く離れているからこそ愛おしい。
夜は、眠れないんだ。 あいつの影がいつも脳髄を冒す!
俺の中の夢は決まってあいつ等が出てくる。 紅木咲は、愛し合う二人を引き裂こうとする外道野郎。
そして、刹那は、常に俺を見詰めながら助けを求める俺の愛人。 俺は、遠くから名前を呼びながら見ることしか出来ない。
近くに見えているのに……姿は、分るのに遠過ぎた。
泣けるほどに……痛いほどに!
「帰ってきたぞ。 沢渡町! 俺は、此処に戦いに来た……愛を取り戻す戦いだ。 人間の根源だ! 紅木咲レオを殺す!」
東京から三時間以上、電車に揺られて故郷の輪郭が見えてくる。
昔とは全く違う姿だ。 幾らなんでも高々、五年でここまで変るのか? 少し疑問に思うほどだ。
昔の故郷は、蝶々やらトンボが普通に飛んでいる自然溢れる綺麗な町だったのにな……
正直言えば、沢渡町は、好きだった。 だが、今の工場が乱立する汚い空気の此処は、嫌いだ。
あぁ、でも、そんな息苦しい雰囲気も……刹那を手に入れられるということを思えば何とも無いけどな。
駅が見えてくる。
何人かの人が見える。 俺は、迎えに来るといっていた紅木咲の野郎の姿を探す。
垂れ眼のやる気名さげなチビデブ。 ニット帽を被って……昔と粗、変らないアイツが、俺の目に映る。
あぁ、本当に律儀に来てやがったのか。
うざったい。
「よぉ! ひっさしぶりだな春ちゃん! しっかしよぉ、打ち合わせとかした訳でもねぇのにすげぇよな!
俺達全員一緒の高校だぜ! 是もしかすると友情パワーって奴かもよ!」
「馬鹿か……友情とか、人の居る場所で言うなよ? 恥ずかしい」
真に予想通りな反応をしてくる馬鹿。
俺は、これ以上無いほど冷徹な声でコイツとの再会に答える。 コイツの顔など見る気も無い。
付き合い始めた最初の頃から絡んできやがるだけのうざったい野郎だ。
俺が会いたいのは……
「なぁ、刹那は?」
俺は、声に出して聞く。 刹那……刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那
俺の脳髄の全てを支配する甘美なる魔法の名前……俺は、お前しか見えないんだ。
麻薬なんだ……俺の!
教えてくれよ? お前の役目はそれだけだろう紅木咲レオ!
お前の汚い声も今の間は、聞いてやるから!
「あぁ、刹那な! あいつ、久し振りにお前が来るって事、聞いてかなり取り乱してたぜ?
母ちゃん曰く熱出したらしい! だから、今日は、多分こねぇ! ヒュー、熱いね!
俺、本当妬けちゃうぜ? 一万年と二千年前から愛し合ってたってか!?」
「アクエリオンは、素敵なアニメだったぜ?」
アニメや漫画が好きな紅木咲に触発されて今やすっかり、オタク気味な俺……コイツを気に食わないと思う理由のもう一つだ。
畜生、気に喰わない。
しかし、あいつが俺が来ると知って熱を出しただと? それが、本当なら俺達の愛は千年続く程の純愛!
俺は、益々コイツを排除せねばならない……俺の世界を犯す奴は皆、排除する。
そうだ、それで良い。 幾つもの手段を講じてだ。
「うっわぁ! 本当に、群青原君だ! なっつかしぃ! あっ、あたし……群青原君に会える事心待ちにしてたんだ!
あの……そのっ! 群青原君? あっ……あたし、貴方のために前より綺麗になったよ? 貴方の好みになれたかな?」
そんな傍から見れば妄想全開な愚かしい事を考えていた、俺のもとに女の声が落ちてくる。
あぁ、この声……少し低くなって抑揚がついているけど忘れられるはずの無い声だ。
振り向くと其処には、青目のボーイッシュな茶髪の見慣れた少女。
痩せ型ながらスタイルも良くすらっと背の高い俺の愛した女。
服装のセンスは、磨かれて露出度は控え目ながらも欲情をそそる衣装だ。
そして、何より驚いたのは大人びた雰囲気の紫色の口紅。
あぁ、俺が、紫色って大人っぽくて格好良いよなって言ってたの覚えてたのか。
「お前は、最初から俺の好みだった。 あぁ、この名前を口にする日をどれ程心待ちにして居たか?
刹那……俺だけの刹那! 帰ってきたぞ……もう、離さない」
紅木咲の友情パワー発現を恥ずかしいと言っていた俺は、今、それより遥かに恥ずかしい発言を口にしているはずだ。
それを証拠に、紅木咲の奴は、赤面している。
周りも何人か聞こえたのか目のやり場に困っているようだ。 だが、そんなのは関係ない。
俺にとって、彼女が、唯一のパートナーだ。 それは、絶対的真理なのだ。
さぁ、俺の言葉に刹那……お前は、どう答える?
「突き飛ばしても離れない。 あの時は、幼かったから貴方を追って行けなかったけど……今は、違う! もう、私が……私自身が貴方を離さないんだから!」
「熱いねぇ……目のやり場に困る!」
何て、魅力的な言葉を口にするんだよ? ゾクゾクしちまうじゃないか?
あぁ……帰って来た。 何よりも鮮明に俺の中に残る故郷の残影を見て……俺は手を広げる。
「ただいま、俺の世界」
彼女こそが、俺の世界だ。
>>END
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