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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- prologue ( No.1 )
- 日時: 2011/08/23 21:06
- 名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)
“汝はいつか己自身を……己の体に通っている血を恨む日がくるだろう”
この言葉の“全て”の意味が分かった時、彼自身ではなく他の誰かになってしまう……そんな予感がした。それは体を乗っ取られるのとも違い、確かに彼自身が此処に存在するはずなのにふわふわと曖昧過ぎる感覚に似ているのであろう。それでも彼は平然としているのだろう。そして自分だけが犠牲になるのなら構わないと、微笑むに違いない。この時の幼い彼には分からなかった……こんなどこにでもいるありふれた中の彼というたった一人の人間が、彼の血が、世界全体をも揺るがし軸となる大きな歯車を破壊する力を持っている事は。そしてその壮大な力が“大切な者”を消してしまう要因になる事も、分かるはずがなかったのだ。
力とは使い方一つで人を守る事も傷つける事もたやすく出来る。そのどちらかを選ぶかによって使う者の本質が出るのであろう。彼はタイムリミットに達した時どちらを選び、何を思い何を求め…………何を嘆く?見守ることしか許されない者達は辛く、泣きわめき、ただただ彼の無事を……闇に捕われず正しく前へと進む事を恨まずに望めるのだろうか。
汚れた血を受け継いだ罪なき少年の狂った運命が重々しく、ステージの幕を上げた。
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