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Re: 堕ちた花片 ( No.5 )
日時: 2011/08/04 19:01
名前: 舞々 (ID: caCkurzS)


< 素直に伝えよう >



高校生になって初めての夏休み。

特に部活動などには参加していない、蓮見ゆりあは暇だった。
なんとなく自分の部屋をきれいに掃除して、宿題を全部終わらせる。
それから、伸びた自分の髪をくるくると巻いてみたり。


両親は仕事でいない。 一人っ子の、ゆりあ。


「───おーい、ゆりあっ。 いま暇か?」


突然、外から聞き慣れた幼なじみの声がした。
ゆりあはすぐに自分の部屋の窓を全開にする。

開けると、すぐそこには幼なじみの笑顔があった。
長い明るい色の髪を一つにして、学校のジャージを着ていた。 たぶん、部活が終わったんだろう。



「奈々! 部活終わったの? おつかれさま」

ゆりあの隣に住む、幼なじみの藤原奈々は再び笑顔になった。
奈々は剣道部に所属していて、実は先輩よりも上手だったりする……。


「さんきゅ! ……ゆりあ、暇なんだろ?」
「なッ………! ……うん、まあね、暇ですよーだ!」
「はははっ、グレるなって。 じゃあ、久し振りに語ろうぜ」


そう言った奈々は、少し身を乗りだして、




「最近どーなの、片桐とは」

そう小さく囁いた。
片桐とは、私と奈々の幼なじみの男子のこと。 本名は片桐蓮という。


奈々はニヤニヤしながら私の顔を見ている。
みるみるうちに、私の顔は赤くなっていく。
───なんて恥ずかしいんだろう!

「ちょ、あの、ね、っ。 ───奈々のバカ!」
「ば、バカだと?! すぐ照れちゃうゆりあが悪いんだよっ」
「仕方ないじゃんっ」
「まあ、そういうところが可愛いんだけどね」


そう言われて、さらに赤くなる私。
やっぱ、こういうの駄目。 恥ずかしい。


「そういう奈々だって! ……どう、なのよ?」
「あぁ、直弥のこと?」

奈々は顔色一つ変えず、平然としている。
それから爽やかな笑顔で、


「毎日会ってるよ」


さらりと言った。


こういう、なんていうか、平然と言える奈々が羨ましい。
私はすぐ表情に出ちゃうタイプだから、嫌だ。


「良かったねえ……」
「いやいや、あいつナンパばっっっかりしてんの」
「は?」
「可愛い子見つけたら、すぐ行こうとすんの。 まあ、もう慣れたけど」


直弥も、私たちの幼なじみ。 
木下直弥って名前で、母親がイタリア人でハーフ。 ナンパ癖がひどいのが短所。



「ゆりあはね、自分の気持ち隠しすぎ!」
「んん〜……」
「もうちょっと素直になっても、大丈夫だと思うけどね!」


そう言った奈々は、これから晩ご飯だから、と言っていなくなった。
私は窓を閉めると携帯をひらいた。


……メール、しようかな。