ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.112 )
日時: 2011/12/27 22:05
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)



 そうだ。いまぐらいしか聞けないだろうし、聞いてみよう。

「ノエルは何でキルの弟子なんてやってるの?」

「え……ああ、えっと」

 なんか、語るのに戸惑っている様子。

 むしろ、語りたくなさそう。

「言いたくないなら言わなくてもいいよ? 時間が経ってから、同じ質問するから」

「それ、意味無いよね」

 なんとなく、話したくなさそうだったけど、無理やり笑顔を作って、語り始めた。

「僕らばっかりレイシーの過去のこと知って、何も語らないのはルール違反だよね」

 そんなノエルルールなんて知らない。あらまびっくり、「ル」が3連続登場。



「実は僕、人を殺したことがあるんだ」



 え?



「それも、一人や二人じゃなくて、結構たくさん」



 え??



「僕は、母親に捨てられた、奴隷だったんだ」



 さっきまでにぎわっていた町の音が全て消えるような錯覚。

 それくらいの衝撃を受けた。

「あのころの僕はダークだったし、ちょっと病んでいたから『どうして太陽は何度も登ってくるんだろう? ずっと沈んでしまえばいいのに』なんておもってたなぁ」

 なんで

「始めて人を傷付けた感覚は、今でも覚えてるよ」

 何でそんな話を笑いながら出来るんだろう。



『どうしてそんな風に笑えるの? 自分の親が死んだのに』



 昔、誰かに言われた言葉。ノエルに言ってやりたいな。誰だったかなぁ。

 きっと、この台詞を誰かに言う資格は無いんだろうけど。

「あ、ごめん。こんな話、聞きたくないよね?」

「え、いや…」

 ギクシャク。

 沈黙。

「…エ、エミリーさんの家、行こうか」

「う、ん」

 しどろもどろ。

 空気悪っ。

 この空気をどうにかしないとだ。何か、ノエルに話しかけよう。

 チラッとノエルを見た。

 ノエルの斜め後ろから、コートについているフードを深くかぶり、マフラーをした人が斧を振り上げるのが見えた。

「ノエル危ない!」

 と、叫びながら、ノエルを蹴っ飛ばした。

 上手く斧は外れて、地面に突き刺さる。

「ワタシ以外の女といるなんて、ユルセナイ」