ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.125 )
日時: 2012/01/02 17:05
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)


 結局エミリーの件もノエルの過去の件もお流れになった。

 2人の間に沈黙は続くけど、ストリート内は騒がしい。空気読めよ、街人たち。

 空気悪い。何か話さなきゃ、何かしなきゃ、何か起さなきゃ。起承転結の「起」をしなきゃ。

  わざと転んでみようか。いきなりチョップしてみようか。昔はやってた時代遅れのネタを言ってみるか。

 よし、今のノエルの心境を読んで、それに応じた事をしよう。

 ノエルは、商店街を眺めながら歩いてる。たそがれているっぽい。

 じゃあ、わざと転んでみよう。

 ずしゃっ。ずしゃっ。あれ?

 ほぼ同じタイミングで、ノエルも転んだ。

「イタタ…アレ、レイシーも転んだの? なんで?」

「それ、こっちの台詞…」

 台詞を取られた上に、街人に変な目で見られるし、別の意味で痛い。

 もしや、こいつもわざと転んだんじゃ…。

 さっさと立ち上がって「立てる?」といいながら手を差し伸べてくるノエル。眩しすぎるぜ。

「………………………………………」

 駄目だ、また沈黙が続く。

 今度は、いきなりチョップしてみよう。

「あ、レイシー。アレ、シロウサギさんじゃないかな?」

 見事に遮られた。

「あ、師匠もいる。色々有ったのに、追いついちゃったね。何してたんだろう、師匠たち」

 小走りで近寄ると、キルが、両手にたくさんの紙袋を持っていた。

 キルが買い物をするイメージは無いし、頭の上に4次元エコバックが存在するし、これは、もしや——

「おい、ウサギ。いい加減にしろ。自分で持てないものを買うな」

 やはり、荷物持ち。

 当の本人なんて、両手スッカスカ。

「そんなこといいながら全部持ってくれてるあんたはなんなの」

「街中で争いたくは無いんだ。安心しろ、後で赤い固体に変えてやる」

 そういえば、ヤマネさんがいない。と、思ったらエリーゼさんの肩の上で爆睡中。

「キャー。キー君、怖ー…あ、レイシーじゃないの!」

 思ったより気付くの早かった。

「こう見えてもあたしはウサギだからね。大体の人の心音を聞き分けられる」

「えぇ!? すごいっ!」

 タダのふわふわウサギだと思ってなめてました。本当にそんなことが可能なのだろうか。

「と、言う事はノエルも一緒だな? ノエル!」

「はい師匠! 持ちます!」

 見事な連係プレイだ。名前を呼ばれただけで、言いたいことがわかるなんて。

 すごく仲のいいオシドリ夫婦は、名前を読んだだけで、相手の言いたい事が判るらしいが…。あ、BL的なフラグではございません。(BL…ボーイズラブ)