ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.134 )
日時: 2012/01/06 00:02
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)

目が覚めたとき、一番最初に視界に入ったのは、蓋の開いた油性ペンだった。

「チッ。起きてしまったか…」

「キルさん、あんた何を……」

 目が覚めてよかった。後ちょっと遅かったら、顔に落書きされていたかもしれない。

 ここはどこだろう。剣や斧、大きな鎌に拳銃…さらには、でっかいハサミ、鎧、盾など。危険物が多い部屋だ。

 危険物の多さですぐにわかった。ここは武器屋の中らしい。

 で、何で私はベッドで寝ていたんだっけ。

 ああ、思い出した。キルが撃たれた衝撃で気絶したんだ。私、メンタル弱いな。まさかノエル以下なんてことは無いと信じたい。

 チラッとキルさんを見ると、腹部が赤く汚れているし、穴が開いている。確かに撃たれた事がすぐわかる。

 当たり所が良かったのか、拳銃が不良品だったのか、キルが鉄人だったのか。それは定かではないけど、生きていたならいいや。

「おい、キル。油性ペン、たくさん持ってき…て、なんだよ、起きたのかよ」

「あんたらいい歳して、13歳児の顔に落書きですか」

 小学生のお泊り会の朝じゃ有るまいし。要するにガキなんだなぁ。

 そういえば、他の人たちはどこへ。

「エリーゼさんたちは?」

 私の質問に、キルの顔が引きつる。

「あいつは、酒を飲みまくって……ノエルが…」

「あ、大体予想は出来たわ」

 エリーゼさんが酔った勢いでノエルが被害に遭っているんだろう。何をされているかは知りたくも無いけど。

 ここでクロードさんの素朴な疑問。

「あの女、エリーゼって言うのか。で、あいつは誰なんだ? キルの彼女か?」

 ああ、あの二人が恋人同士だったら…意外とお似合いかもしれない。

「ふざけるな、俺は一生独身を貫くつもりだ。あれだ、あいつは友達以上、恋人未満の関係だ」

 あ、そうだったんだ。二人は友人関係なんだ。ちょっとびっくり。

「別にお前とあの美人の関係なんか聞いてねぇよ。誰だって話だよ」

「ストリートに、たった一つだけ有った時計屋の元・店長だ」

「へぇ、時計屋なんてやってた「あのシロウサギか!?」

 クロードさんに台詞を遮られて、私の台詞は無かった事にされた。

 後で、こいつの台詞も遮ってやろう。

「あの店はつぶれて、新しくなったそうだな」

「そうだけど、あの店の店長か! 砂時計職人だよな、あのウサギ!」

 エリーゼさん、かなり凄いウサギだった。人の心音が聞き分けられるし、勇ましいし、砂時計職人だったなんて。

「いや、砂時計職人なのは、あいつの弟子で、三輪車にはねられて死んだらしい」

「うわ、深刻! それで、エリーゼさんは?」

 キルは私の質問に、言いにくそうに答えた。

「1ヶ月くらい落ち込んでて、時計屋もやめて、勝手に動物園に潜入して生き延びていたらしい」

 なんか、悲しい話なのに、どこか笑えるのはなぜだろう。

 動物園か、それとも三輪車か。

「それで、アリスの件があって、フランスに7年間滞在。ちょくちょく鏡の国に戻ってきて、ある日突然人間の姿に」

「え、お前、羨ましい。ある日突然美人が尋ねてきたんだろ? いいなぁー。オレもマッドハッターやろうかなぁー」

 その後もくだらない会話を繰り広げ、山手線ゲームなんかもして、気が付くと午前2時。

 本当に小学生のお泊り会みたいだ。

「じゃあ、続きは、明日。おやすみー」

 と、私がお開きにして、そのままさっき使ってたベッドで眠りに付こうとしたが

「それはオレのだ! どけっ」

 と、ベッドから突き落とされた。

 仕方なく廊下で眠りに付いた。