ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.142 )
日時: 2012/01/08 22:26
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)



 チュンチュン。うさうさ。

 小鳥の鳴き声と、謎の鳴き声で目が覚めた。

「うさうさ。おはよう、レイシー。うさうさ」

 謎の鳴き声の正体は、エリーゼさんの声だった。

 珍しく、ウサギの姿に戻っていた。

「おはよう、エリーゼさん」

 ふわふわで、さらさらで暖かいこのウサギ、エリーゼさんでなければ抱きしめたい。

 いきなり人間の姿に戻られたら、20歳くらいの人を抱きしめてる事になるから、頭をなでるだけにした。

 「ウサギだと思って、なめるな!」とか言いながら蹴られると思ったけど、猫の様にゴロゴロ鳴く代わりに、うさうさと鳴かれた。

「いい朝ね、うさうさ」

「そのうさうさって、なんですか」

 さっきから、5回以上はうさうさ言っている。

「チェシャがゴロゴロ言うから、対抗してるの。うさうさ」

 そういえば、なんとなくだけど、ウサギの時と人間の時で性格が違うような気がした。

 今は、子供っぽさを感じる。

 いい年して「うさうさ」なんて言っていられるのも、ウサギの時だけだ。

 エリーゼという人の姿だと、大人っぽくて、馬鹿だと思えるから。

「ノエルとヤマネさんはどうしてますか」

「ヤマネは、爆睡うさうさ。ノエルは…ちょっと…昨日、あたしが酔った勢いで、凄い服装だから…見に行かない方がいいうさうさ」

 エリーゼさんがボソッと「メイド服、似合ってたなぁ。くっくっく」と、呟くのが聞こえてしまった。聞かなければ良かった。

 でも、ノエルのメイド服姿、見てみたいような気もする。

ドオオォォン


 突然、クロードさんとキルがいる部屋から銃声が響いた。

 二人がいる部屋の扉の近くにいる私より先にエリーゼさんが扉をぶち破った。

 そこには、まだ銃口から煙が出ている拳銃を持ったキルと、倒れているクロードさんの姿があった。

「キル、あなた、クロードさん殺したの!?」

「…いや。二人でロシアンルーレットをしようと言う話になって、準備したら…」

 自分で言ったはいいが、朝、「おはよう!」より先に「殺人したの!?」を言うようなシチュエーションが存在するなんて。

「痛ててて……オレ、撃たれるほど悪いことしたっけ?」

 ちょっと待て。デジャビュだっけ。これ、昨日もあったぞ。拳銃で撃たれて「痛ててて」で済むこと。

「あ、いや。わざとじゃないんだ。済まない」

「おいおい! 前もそうだったじゃねぇか!」

 あ、前も撃たれたんだ、この人。

「なんかの間違いで、お前がオレを撃って、昨日仕返ししたら、今日撃たれるとか。だからオレの手相、生命線がこんなにも短いのか!」

 とりあえず、大した事はなさそうだ。

 私とエリーゼさんは、何事もなかったかのように部屋を去っていった。

「あ、待て待て。そこの二人、包帯を取ってきてくれると助かる」

「……家で簡単な手当てをするくらいなら、病院に行った方がいいですよ」

「そんなこというな! えと、誰だっけ? あ、名前知らねぇや。じゃあ、ロングストレート! 包帯だけでいいからっ」

 誰がロングストレートだよ。あの人は、私の髪の毛が本当はへにょへにょしていることを気づいてくれてないみたいだから、放置した。

 大体、拳銃で撃たれたら、潔く死ねよ。

 エリーゼさんがぶち破った扉をとりあえず戻して、部屋を去っていった。

「あああ! 血が! 鉛の玉が腕をかすったんだぞ!? 大量出血で死ぬ!」

「安心しろ。俺より軽症だろう」

 そういい残して、キルも部屋を去った。