ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.3 )
日時: 2011/11/26 12:16
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)


「やばい! 遅れる!」

 どこからか、そんな声が聞こえた気がした。

 私は、レイシー・キャロル。今は、庭で本を読んでいた。田舎で、森の中のにある家だから、あまり人が通らないのだけど、そんな声が聞こえた気がした。

(気のせいかな?)

 再び、読書を続けた。

 確かに、ここは人通りの少ない田舎だけど、近くに何件か家が有る。でも、あんなしゃべり方をする人、私ぐらいしかいない。はず。

「やばいやばい! 時計、落としたし!」

 こんどは、随分はっきり聞こえた。女性の声だ。時計を落とした?

「どこに落としたんだろう? ああ、時間が無い!」

 すぐ近くで聞こえる。周りを見回しても、人の姿は無い。

(私、風邪っぽいのかな?)

 そういえば、朝から頭が痛かった気がする。もう、家に入ろう。そう思って、家の入り口を見ると、何か光るものが落ちている。

「なんだろう? あれ」

 近寄って、よく見ると、砂時計だった。太陽の光が、砂時計のガラスの部分に当たり、光って見えただけだった。もしかして、時計を落としたと言っている人の時計とは、コレなのかもしれない。

「あの、時計ありましたよ?」

 どこにいるのかわからない人に向かって言う。

「それだー!」

 誰かがそういった瞬間、白いウサギが飛んできて、私の顔面にとび蹴りをした。

 思わず、砂時計を落とした。砂時計を拾って、ウサギが走り去っていく。

 おかしい。ウサギが喋った。いや、喋るはずが無い。やっぱり、風邪なんだ。でも、ウサギがとび蹴りをした。

「……やっぱり、風邪なんだ」

 蹴られるときに、ウサギの毛が触れたけど、すごくふわふわだった。普通のウサギでは、考えられないほど。あのウサギを、抱きしめたい!

 私は、ウサギを追いかけた。

「まって! そこのシロウサギ、止まってよ!」

 ウサギは、走る速度を少し上げた。

「まってよ! ……まてっつってんだろがー!!」

 さらに、ウサギは速度を上げた。ウサギも、捕まったらヤバイと思ったのだろうか。

「私が、10を数えるまでに止まらないと、無理やり捕まえて、鍋にぶち込むぞ、オラァ!!」

 ウサギは、さらに速度を上げて、レイシーが追いつけないほど、速度を上げた。結局、ウサギは、見失ってしまった。