ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.38 )
日時: 2011/08/22 17:02
名前: クリスタル (ID: d9npfmd5)

 シロウサギこと、エリーゼさん(逆?)の帰った次の日、夏休みの課題に取り掛かった。後で楽になるように。

 母は、朝から夜まで仕事で帰ってこない。実は、私の家に父はいない。母に聞いても何も教えてくれない。なので、勝手に想像した。私が記憶を失う前に死んでしまったんだろう。おそらく。


 いつの間にか外は、夜のトバリが下りていた。時計を見ると、20時になっていた。

 朝からずっと夏休みの課題をやっていたが、1日で全てを終わらせてしまった。私って神?あ、ごめんなさい。嘘です。

 「ガチャッ」と音がして、玄関のドアが開いた。私の母は、もっと遅い時間に帰ってくるはずなんだけど。あ、泥棒?

 私は物置から斧を持っていき、玄関を見た。

「……やあ、レイシー……」

 玄関のにいたのは、私と同じ年くらいの少女だった。綺麗な黒髪で、目つきが若干悪い。猫っぽい目だ。

 私が7歳のとき記憶を失った後、行方不明になった少女の話しが、テレビや新聞で話題になった。玄関にいる少女は、その行方不明の子にそっくりだ。そのこの名前は——

「サ、サラ……さん…?」

「この人の事、知ってるの? まあ、いきなり消えたら有名にもなるか」

 自分のことなのに、他人事。しかも、僕っ子。いったい何者なんだろう。

「この家に何をしに着たの?」

「僕は、君を殺しに着たのさ」

 隠し持っていた小刀を私に突きつけてきた。

「死ねレイシー」

「お前が死ね、不法侵入者が」

 と、言っても殺しの経験も無ければ、そんなことをする勇気も無い。ここは、逃げるしかないだろう。

 私はリビングへ走り、ベランダから飛び出し、庭で、おかしなものを見た。

 庭の全体に霧がかかっていて、何も見えない。

「なに、これ……」

「この家は、僕の張った結界の中。鏡の国の住人なら壊せるのに、君にはその記憶は無い」

 彼女は、すぐ後ろに居た。私は、逃げ出した。

 「君にはその記憶が無い」……まるで、私が鏡の国に居たみたいな言い方だ。

「逃げたって無駄だよ、レイシー。君はここで僕に殺される」

 なぜか前から声がする。なぜか、後ろにいたはずの彼女が前にいる。

「……どうして、私の名前を知っているの?」

「その質問は、一昨日も聞いたよ。僕に答える必要は無いね」

 お、一昨日? 一昨日は、エリーゼさんにはじめて会った日だ。他には、誰にもあってない。確か、喋る黒猫が居た程度だ。

 喋る、黒猫。確か、オス猫だった。

「まさか、しゃべる黒猫……」

「そう。ぼくはチェシャ」

「あんた、エリーゼさんと同じように、人間の屍に寄生できるみたいだけど、なんでオスの癖に、女子に寄生してるの!? まさか——」

 なんか、自己紹介されたけどどうでもいいや。

「若くて、美人な女子に寄生して、変態な——」

「僕にそんな趣味は無いよ! これは、アリスが選んでくれたんだ! できれば、僕がオスだから、男子の屍がいいって言ったのに!」