ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.49 )
日時: 2011/09/03 17:11
名前: クリスタル (ID: d9npfmd5)


「エリーゼさん。手、大丈夫ですか?」

 エリーゼさんが、自分の左手を眺める。

「痛みは無いから気にしてなかったけど、すごい出血ねぇ」

 何で人事なんだよ。自分の手だろ。

「まあ、丁度いい」

 エリーゼさんは、微笑みながら、絶賛流血中の赤く染まった左手で、鏡に触れた。

「ちょ、私の家を汚さないでください!」

 エリーゼさんの触れたところは、赤い手形が出来た。手形から、赤い雫が滴る。うわぁ、グロテスク!

「ゲートを開きなさい」

 なんか、つぶやいた。エリーゼさんが謎の言葉をつぶやいた。しかし、何も起こらない。

「ゲートを開け!!!」

 あ、またキレた。私より沸点が低い人が存在するとは。あ、人じゃないか。

『あ、すまん。寝てた。ゲートを開きます』

 鏡の中から、そんな声が聞こえた。

「エリーゼさん、何のゲートですか。そして、誰の声ですか、今の」

「ん? 後で教えるから」

 「後で」それは、いつになるんだろう。突然鏡から強い光が放たれた。私とエリーゼさんは、光に包まれた。


 気が付くと、暗い森の中に居た。いや、暗い森の中に落ちていた。It fell in the a dark forest.

「あ、見つけた。レイシー、怪我してない?」

 どこからとも無く、エリーゼさん登場。

「あ、大丈夫です。ここは、どこですか?」

「ここは鏡の国。あっちの世界から、鏡を通じて通ることが出来るから、その名前が付いたらしい」

 別にその豆知識は、どうでもいい。役に立たない。

 カーンカーンカーン

 何か、硬いものを叩く音が響いてる。よく見ると、少し離れた所に小屋がある。

「あの小屋は、帽子屋。ちょっと、行ってみる? と言うか、あそこに用事があるんだけど」


 小屋の前まで来ると、私と同じ年くらいの少年が出てきた。

「あ、シロウサギさん、アリスさん、お久しぶりです」

「私、レイシーです!」

 また゛アリス゛と間違えられた。

「え?」

「レイシーのことは、後で話す。……キルは、仕事中……ね」

 また、『カーンカーンカーン』と、何かを叩く音が響く。

「いえ、師匠は、サボってます! あの金づちの音は、テープレコーダーに録音された音で、完全にサボってます! ガツンと言ってくださいよ、シロウサギさん!」

 告げ口したよ、この子。エリーゼさんは、静かにうなずき、小屋の扉をけり開けた。

「ぐわっ」

 小屋の扉は、吹っ飛んで、中にいた人に当たった。

(……)

 小屋の中にいた人は、テープレコーダーと止め、机に向かい、金づちで、鉄板を叩き始めた。

「キル、またサボっ」

「俺はサボってない。俺は、ずっと仕事をしていた。お前の目がおかしいんじゃないか? 眼科へ行け」

「あんたは三途の川を越えて行け」

 そういえば、ここは帽子屋のはず。鉄板叩いて、何をしていたんだろう?

 キルと呼ばれた人は、鉄板を窯に入れ、暫く焼いて、取り出して、金づちで叩き始めた。あっという間に帽子の完成。(どう見ても、布製)

「鉄が、布に……」

 思わずつぶやいた。おかしい、おかしい。有り得ない。

「ここが師匠のすごいところなんです。僕がやっても、帽子じゃなくて、フライパンが出来るんです」

 それもそれでおかしい。

「本当におかしいやつでしょう? いかれてるでしょう? クレイジーでしょ!? 気持ち悪いでしょ!? 殺したくなるでしょおぉ!??」

「エリーゼさんの熱い思いが伝わって着ますよ」

 熱い熱い思いが。とてつもない殺意が。

「だからキルは、いかれ帽子屋、マッドハッターって、呼ばれてるの」

 へぇ。へぇ……。どうでもいい。『お家で簡単! 育毛剤の作り方☆』くらいどうでもいい。

「そんな事より、そいつは誰だ? アリスではないようだが?」

 エリーゼさんが、くすっと笑った。

「流石キル。あなたは気付けたね。この子は、レイシーよ。多分、噂は本当だと思う」

「?」

 私の噂?