ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鏡の国の君を捜して ( No.63 )
- 日時: 2011/10/22 13:20
- 名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)
どうしよう。ああ、本当に何してるんだ、僕は。カッコウつけて「そんなにかまって欲しいなら僕がかまってあげるよ」なんていっちゃって。
「帽子屋の弟子、邪魔をするならお前から消してやるけど、どうする?」
ホラ、あんなこといってるよ。『女装大好きキャット』VS『かつてもやしと呼ばれた人』って、勝ち目無いじゃん。どうしよう。
とりあえず、師匠にもらったバターナイフで戦ってみようか…。って、バターナイフで勝てるもんか!
ああ、レイシーは僕に「戦って勝って見なさいよ、男でしょ」の目線を送るし、武器は無いし、師匠もシロウサギさんも着てくれないし……武器……無いし。
「後、十秒で判断出来ないなら、二人まとめて殺す。でも、僕は殺生は好きじゃないから……」
チェシャ猫って、意外とやさしい。知らなかったよ。チラッと小屋のほうを見る。あ、小屋の前の切りカブ! 斧が刺さってる。きっとエリーゼさんのだ。
(勝手に使っていいかわから無いけれど)僕は斧を手にしてチェシャ猫のほうをにらみつけた。
「レイシーは今の内に逃げて!」
驚いて僕を見つめるレイシー。
「ノエル…!?」
「大丈夫。僕が「ちゃんと時間稼ぎしてよね! ノエルの葬式、絶対いくからね!」
「う、ん……」
どうしてこんなに悲しいんだろう。死ぬ事前提で話を進められてるからかな? なんにせよ、僕は時間を稼いで、レイシーを逃がさなきゃいけない。命に代えてでも。
「…哀れなやつだね。屍は僕が有効利用す「死ぬ事前提で話を進めないでよ!」
どいつもこいつも…僕の周りには、まともな人間居ないのか。
「ひゅん」と、風を切る音がして、目の前にチャシャ猫がせまっていた。
いつもウェーブして、どんなに直しても直らないへそ曲がりの僕の左側の前髪が少し切られた。さらに、その勢いで心臓を突き刺そうとしてるチェシャ猫を蹴り飛ばす。
倒れているチェシャ猫をめがけて斧を振り下ろす。ギリギリかわされる。
チャシャ猫が素早く立ち上がり、僕の腕切断を試みる。斧の切ることの出来ない刃の部分で防ぐ。嫌な音がして、斧にヒビが……。
僕が斧のヒビに気を取られた一瞬の隙を突いて、チェシャ猫が蹴りを入れる。倒れた大木へ吹っ飛ばされる。
蹴られたことによる腹痛、大木にぶつけた事による後頭部と背中の痛み。時々、本当に僕はだめなやつだと思う。
痛みで立ち上がれない僕の首を狙って小刀を振り上げるチャシャ猫。振り下ろされる瞬間、一か八かで斧を振る。
「カキーン」という音がして、チェシャ猫の小刀が弾き飛ばされる。
武器を失ったチェシャ猫の取った行動は、殴る・蹴るなどの暴行だった。最初は斧で何とか防いでいたけれど、さっきのヒビが大きくなって簡単に壊れた。
武器をなくした僕は何も出来なかった。ただ、殴る・蹴る・踏む・引っ掻く・引っ張るの暴行をされるたんぱく質の固まり状態だった。
このままじゃ僕は死に、チェシャ猫にレイシーも見つかって、僕は「何してたんだよ。使えねーな」って言われるだけだ。そんなのいやだ。
必死でチャシャ猫の足を引っ張り、転ばせた。さらに、壊れた斧の棒の部分で殴った。が、簡単に折れた棒。
また、蹴っ飛ばされた。今思ったけど、小学生男子のマジのケンカみたいだ。ここら辺で、男の先生が止めに入って二人仲良く説教されるのが普通だったが今、止めるべき人は小屋の中で寝てるんだろうか。
こんな真夜中にマジのケンカするなんて…なんて青春ドラマなんだ。このケンカは「マジ」を越えた「デスマッチのケンカ」だけど。
「ハァ、ハァ……本当にゴキブリ並みにしぶとい…」
「それ、師匠に…言ってください」
「暇があったら」