ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.78 )
日時: 2011/11/26 10:04
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)

今しかない。ノエルを救う事ができるのは。

 私しか居ない。チェシャを殺すことの出来…殺すのはまずいか。

 『私は、その辺に落ちていた大きめの石を拾った。そして、チェシャ目掛けて飛び掛る。

 あまりに急の出来事で、チェシャを簡単に倒すことが出来た。

 不意打ちなんて卑怯だな、私。』

 と、なることを願って、大き目の石を探した。お、いいのがあった。

 そして飛びかかろうと、倒れた大木を乗り越える。

 かっこよく飛び掛り、打ちのめす。そんな予定だったが、予想以上に倒れた大木が高くて、つっかえた。さらに、大木に足を乗せた瞬間、コケで足が滑って、ノエルの近くに落ちた。

 顔を上げたらゴミを見るような目で私を眺めるチェシャの姿があり、横には引きつった微笑みのノエルの姿があった。

「……ご、ごきげんよう、皆様。今夜は、月がお綺麗ですわね、おっほほ…」

 と、棒読みで言ってみたが、チェシャの表情がゴキブリを見るような目に変わっていた。

「ど、どうしたんだい? チェシャ君。なんだい? その、ゴキブリを見るような目は」

 軽蔑のまなざしで一言もしゃべらず、タダ黙って私を眺めていたチェシャが、やっと口を開いた。

「何でここに着た。殺されたいの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

 チラッと、ノエルを見ると、軽蔑のまなざしに近いものを向けられていた。

 皆に軽蔑されている私って、やっぱり馬鹿なのだろろうか。まあ、森の中で迷子になってみたり、睡魔と闘って負けてみたりしている次点で私は馬鹿なんだろうけど。

「ノエル、ここで二人仲良く殺されようよ。チェシャ、私達の死体は、同じ墓場に埋めてね」

「…僕、同じ墓場に埋められるほどの関係になった覚えは無いけど」

 チェシャが無駄に長いため息をついた。その間、なんと30秒弱。肺活力、半端ない。肺活力って、どうやって鍛えるのだろうか。

「もう、殺意が失せた。元々憎んでたり、怨んでいたわけじゃないけど。今はどんなに頑張っても、お前たちを殺す気にはなれない」

 チェシャはそう言い終わると立ち去ろうとした。

 いやいや、まてよ。チェシャは、私に恨みや憎しみがあったわけでもないのに、それなのに私を殺そうとした。2回も。

 理由も無く殺すなんて、それって誰かに頼まれていたとか? でも、そんなの心当たりが無い。じゃあ誰が————?

「……アリス……」

 私にそっくりで、チェシャのハートを射止めていて、(なんか違う?)何もかもが謎の少女。彼女は、私の記憶を無くしたときのことと、関係が有るんじゃないだろうか…。

「チェシャ、まって! 教えて欲しい事があるの!」

「お前のお願いなんて聞かないよ」

 チェシャがそっと答えた次の瞬間、小屋の窓が叩き割られた。

「待てよ、アリスオタク! 今殺しに行ってやるから」

「来なくていい、消えろ」

 エリーゼさんの登場に寄り、チェシャが機嫌を損ねて走って逃げてしまった。エリーゼさん、空気読めないなぁ。

「うわっ? ノエル、ボロボロねぇ」

「あ、シロウサギさん……助けに来るの遅いですし、師匠は?」

 割れた小屋の窓の方に目をやるとキルさんが『緊急用治療セット(禁)』と、書かれた箱を持ってきていた。

「この緊急用治療セットは、危険なんだが……まあ、お前なら大丈夫だろう」

 『緊急用治療セット(禁)』を開いて、なにやら色々出しているキルさん。中には包帯、『傷薬(禁)』とかかれたビンが3種類、メス、イモリの死体、亀の甲羅、すっぽんの死体などが入っていた。

 薬の匂いというより、腐臭のする箱だった。

「待って、師匠。『緊急用治療セット(禁)』て、なんですか!? 大丈夫なんですか!? それの使用後、僕は生きているんでしょうか!」

「………………………………………」

 キルは何も答えなかった。ノエルの顔が青ざめてゆく。ちなみにキルさんは薄笑いしていた。

 そういえば今、深夜なんだよね。ああ、眠い。

「レイシー、この馬鹿達はどうでもいいから、小屋に戻って寝よう」

「…はい」

 こうしてノエルとキルさん以外、女子グループは、眠りに付いたのだった。