ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鏡の国の君を捜して ( No.88 )
- 日時: 2011/12/10 07:23
- 名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)
朝日がまぶしくて…と、言うよりは寒くて目が覚めた。
エリーゼさんが私の布団(正確にはノエルの布団)を取って、一人で使っているから。しかも昨日、エリーゼさんが小屋の窓を割ってしまったから。
小屋の中を見回すと、私とエリーゼさんしか居なかった。
とりあえず外に出たくて小屋の扉を開けようとした。が、押しても引いても開かない。引いても開かないのは、この扉が押してあける扉だからなんだけど押しても開かないのは……?
あ、そうだ。この扉の前には、大木が倒れているんだ。昨日、チェシャが切り倒した大木が。
だからここの出入り口は、割れた窓しかないのだ。仕方なく、そこから脱出を試みた。
その窓は、昨日エリーゼさんが付く抜けてきたのと私とエリーゼさんが中に入ったのを最後に、誰も使用していないので昨日と同じく、割れ残った窓ガラスが刺さりそうで危ない。
「……痛っ……」
昨日は刺さらなかったが、今日は刺さった。右手の人差し指から血が滴る。
うわー「最悪だー」と、呟いて、窓の外へ。
周りを見ると、小屋の前に倒れた(正確には切り倒された)大木を枕に、すやすやと眠るキルさんとノエルが居た。
昨日、何があったのかは知らないが、とりあえずそのまま寝てしまったらしい。
2人の間には、ビミョーな隙間がある。
まあ、無かったら逆に困る。ボーイズラヴと言う、新しい世界へ旅立ってしまう2人を笑って送る事なんて、私には出来ない。
キルさんの目が開眼した。
「パチッ」とかじゃなくて、「かぱっ」というか、「ギンッ」という効果音の似合いそうな目の開き方。
「オ、おはようございます…?」
「………………………………………よう」
「………………………………………」
ダメだ、この人。完全なる寝起きなんだ。
キルさんはそのままあくびをして、また寝てしまった。
ちょっと待て。残された私の立場はどうなる。このまま二人の寝顔なんて眺めてても、タダの変態みたいだ。
あ、二人を起こせばいいのか。
「起きろ!」といいながら蹴り飛ばす(ノエルを)。
「ふぐわっ」というよくわからない声を出す(ノエルが)。
「ふあ…おはよう、レイシー」
「お……はよ」
何事も無かったかのように起きて、爽やかな挨拶。そんな、キラキラ目で微笑まないでよ、直視できない。
ノエルを良く見ると腕も足も包帯グルグルで、半ミイラ状態。
「キ、キルさん、さっき起きたんだけど、また寝ちゃった…」
「え? ああ、師匠はいつもそんな感じで二度寝を繰り返して、八度寝くらいしてますよ」
八度寝——。そんな言葉、初めて聴いた。
突然キルさんががばっと立ち上がった。
「そうだ、ノエル。まだあったぞ。『ホームレスエミリー』だ」
は……? ほーむれす…えみりー?
「師匠、目ざといし、シツコイですよ…。えと、『理科が好きになれる1分間の秘密』」
「目ざといのはどっちだか。と……ダメだ、諦めよう。『土の中にも山田さん』———あ」
しりとりだろうか?
「残念、師匠の負けです。ちなみにまだ『土の中のエミリー』がありますよ」
「くっ……おのれ、エミリーマニアが…!」
エミリーマニア? なんか良く分からなくなってきた。
「お二人さんは、何をやってるの?」
「レイシー、知らないの? 『山手線ゲーム』。ジャパンで流行ってるんだって、師匠が言ってた」
どうやら「お題」として1つのテーマを定め、そのお題に沿った解答を参加者が順番に解答していき、「お題」は誰にもいくつか答えが思いつくもので、正誤の判定が容易に可能なもの。
一度出た答えは再び答えとして使うことは出来ない。
同じ答えを2回言ったり、途中で解答を言えなくなったり、テーマに合わない誤答をした者が敗者となる。
敗者に対してはしばしば罰ゲームが行われる。
と、言うものらしい。
「ちなみに、さっきのお題は、『作家・エミリーの書いた本の題名』だ」
「じゃあ師匠、罰ゲームです。『ハートの王女とUNO』でしたよね? 確か、師匠は約束はキッチリまもる人だとか…」
ノエルのことを軽くスルーしてキルさんが言った。
「レイシー、お前に伝えなければならないことが有る」