ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 鏡の国の君を捜して ( No.97 )
日時: 2011/12/11 08:15
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)

「ストリートってなんですか!」

 エリーゼさんに元気よく、大きな声ではっきりと質問した。

「鏡の国の一番大きな町の名前。色んな人が住んでいる。あたしの家もストリートにある」

「ハートの王国が一番じゃないんですか!?」

「王国って言うけど、ただの城よ、城」

 じゃあ、王国なんて呼ぶなよ。そう思った。

 帽子屋の小屋を後にする前、キルさんに聞いてみた。

「帽子屋、営業休んでいいんですか?」

「いや、駄目だろう。どう考えても」

 じゃあ、何で営業休むんだよ。そう思った。まあ、でもあれと同じか。駄目って判っていながら学校にお菓子を持ち込む小学生の気持ち。

 この帽子屋の店長、小学生レベル!? 流石、マッドハッターとしか言いようの無い結果。

「じゃあ、行こう! ストリートに!」

 やたらテンションの高いエリーゼさんについていく形で、帽子屋の小屋を離れた。


「むっかしーむっかしー浦島はー♪ 亀をーいーじめた餓鬼をつっかまえてー♪ 竜宮じょーに行ってきーたさぁー♪ あれ? なんかちがう?」

 やたらテンションが高いエリーゼさん。

 正直言うとウザい。黙れ。

 帽子屋の小屋から離れても、ずっとずっと森の中。周りを見たって、木、木、木。

「ねえ、キルさん。いつになったら森から出れるんですか?」

「もうすぐだ。ついでに俺のことはキルでいい」

 言うの遅い。昨日の夜会って、今、今日の夕方まで何時間たってるんだ。何回「キルさん」って呼んだ事か。

 そういえば、ノエルのテンションが低い。さっきまで、あんなに騒いでいたのに。

 ちょっとうつむき加減で、どこか悲しげな表情のノエル。

 私に見られていることに気付いたのか、私を見て、軽く微笑んだ。ヤメロ、ホレる。

「え、何で目をそらすの!? 僕がキライ!?」

「それ、タダの被害妄想って言うのよ」

「そっか。それならよかった」

 また出た。爽やか笑顔。こんないい人なのに、恋人居ないのだろうか。

 聞いた方が早いな。

「……ノエル、恋人居ないの?」

「え。はい。あ、はい。え!? はい。はい…ああ、はい」

 動揺してる。だって今ので5回「はい」って言ったし。そんなに動揺する必要は果たしてあったのだろうか。


 そんな風にわいわい話しながら歩いていると、森の木が少なくなってきて、民家が見えてきた。

 やたらおしゃれなレンガ造りの家の前を通り過ぎるとき、表札をチラ見した。

『ヤマネ門番  鏡の国・フランスゲート』

「あ、ヤマネの家はそこか」

 エリーゼさんがヤマネの家を通り過ごしてしまい、スキップしながら戻ってきた。

 白いロングドレスのレースがふわふわ揺れるのが綺麗。

「そういえば、何でいつも白いドレスなんですか? あ、自分の美白を見せ付けるため?」

 エリーゼさんに思いっきりほっぺをつねられた。

「あのねぇ、私が使ってるこの屍がいつもこんな服装だったの! 殺されるあの瞬間だって—————」

 エリーゼさんは何かを言いかけて、やめてしまった。