ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 九十九怪談 第一回 ( No.3 )
- 日時: 2011/08/08 15:31
- 名前: 斑 (ID: Au8SXDcE)
第一話【消えた警備員】後編(前編→>>2)
(多少グロテスクが入ります)
男は振り向いた。
だが、そこには誰もいなかった。ただ見えるのは暗い廊下だけ。
——あいつじゃなかったのか……。
そう思ったところで、別の考えが浮かぶ。
——では、誰だ?
体がぞくぞくする。
まだ音はしていた。
〝ガタッ…ウィーン………ゴトッ〟
男がいなくなったとはいえ、この音の正体を確かめなければ気が済まな
い。恐ろしいが——進むしかない。男は後で探そう。そして直ぐに此処
から出て行ってやる。
男はそう決意すると一歩を踏み出した。
男は知らなかった。
さっき、肩を叩かれたのが〝誰か〟からの警告だったことに。
男は見てはならないものを見てしまう事になろうとは。
それは直ぐに起きた。
男は階段の直ぐ傍まで来て顔が青ざめた。腰が抜けてしまっていた。
男が見たのは———
此処最近動かしてなかった筈の機械が動いていた。
そしてレールに流れていたのは人間の手頸。
大量に流れ出し、最後には置いてあるダンボールに落ちた。
———何なんだよ?!
頭の中に「逃げろ!!」という単語が何回も通過する。
きっと男の本能がそう言っているのだろう。
だが体が動かなかった。
例えるなら金縛りだろう。
そこでふと男の頭に、ある事がよぎった。
最初に工場に入って嗅いだ匂い。
鼻がツンツンする匂い。
あれは紛れもなく人間の血の匂いであった。
男が「嗅いだ事がある」と言ったのはこの匂いで間違いなかった。
本来、あそこで気付くべきであった。人間が立ちよって良い場所ではな
いと。戻るべきだと。
さっき、肩を何者かに叩かれたときに逃げるべきだったと。
あれが「最後の警告」であったと。
だが——男は遅かった。知ってしまった。何故、送った警備員が返って
こないのか。
おそらく、あの手頸のどれか——もしくは全部が——送られた警備員
の手頸。決してサボって帰ってこなかった訳ではなかった。
あの噂通りだ。
〝あの工場は呪われていて、入ったものは戻って来ることはない〟
最悪だ。
その時だった。
男の後の方で何かを引きずる音がした。
男は振り向いた。
そこには、鎌を持ったうつむき加減の髪の長い老婆と……老婆の左手に
は男が引きずられていた。
——「!!!!」
その男は、工場へ一緒に来た男だった。男には両手首がなかった。
おそらく大量出血で死亡している。
——男はあの鎌でやられたのか!!!
逃げなければ。
だが体が動かない。
そんな男に老婆は構わず、無残に鎌を振り落とす。
「う、うわっ……やめろォォォォォオオッ!!」
■
男二人は気づいていなかったようだが、更衣室に積み置かれた段ボール
には小指が覗かせていた。
そして——開けていた入口は閉まっていた。
■
男二人が戻ってこない事を気にした新たな社長は、今までの事を調べ上
げ、警察に依頼した。
「工場を捜査してくれ」と。
そして警察は工場内を調べたが、何もなかった。段ボールも。
鼻をつく匂いも。
だが、警察は念のためと二度と誰も入らないよう封鎖した。
もう少しそれが早かったら——男二人は助かっていたのかもしれない。
■
工場は今も動いているようだ——————
■完■
「これで、俺の話は終わりだよ」
仲村君は笑顔でそう言うと自分の目の前にあった蝋燭の灯を消しまし
た。
あと98話残っていますね。
さぁ、どうでしたか?
一話目は。
仲村君は語り方が上手ですね。
それに、詳しいですよね。
友達から聞いたとしても、その友達はどこで知ったのか?
仲村君が体験したような感じで語ってくれましたね。
二話目はどんな話でしょう?