ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 九十九怪談 第一回【合わせ鏡】 ( No.7 )
日時: 2011/08/14 14:21
名前: 斑 (ID: Au8SXDcE)

 第一話【合わせ鏡】(>>6の続きです)



中野はそっと「倉庫部屋」に入ると、すぐにドアを閉めて、持ってきた
懐中電灯をポケットから取り出して辺りを照らした。
いろいろなものが置いてあった。積み上げられたダンボール、使わなくなった人体模型(何故捨てなかったのか)など、それと……三面鏡が置いてあった。
中野は三面鏡に歩み寄ると、腕時計を見た。ちょうど二時。



三面鏡を開けた。



—————んんっ?


(映んないじゃねえかよ)


そう。三つの鏡には中野の姿が映らなかった。
ほこりでも鏡に付いていたのだろうか。
鏡を触ろうとして右手をのばした。
そのときにちょうど腕時計が見えた。二時一分。

(あ〜あ、これじゃあ意味がない)

中野はため息をついて諦めると倉庫部屋を出た。
そして先生に気付かれることなく学校を出た。



◆ ◆ ◆

≪今朝二時頃、○○小学校の交差点でトラックとの交通事故がありました。被害者は小学生の男の子で頭を打って即死、トラックの運転手は居眠り運転をしていたとの事。トラックの運転手はすぐさま逮捕されました。トラックの運転手は『急に眠気が差した』と認めています。
なお、少年の手には何故か懐中電灯が握られて———≫

「可哀そうねぇ…この子」

テレビを見ながら、どこかの母親が呟く。

「でもさぁ、何で懐中電灯持ってたのかな」

隣にいた少女が母親に聞く。
母親は首を傾げながら答えた。

「『合わせ鏡』でもしてたのかねぇ?」

「合わせ鏡?」

「うん。私の時も流行ったよ。深夜二時頃に合わせ鏡をすると将来の自分が見えるって。あの男の子、わざわざ学校に行ってやったのかもよ?…映んなかったんじゃない」

「自分の姿が?」

「そう」

「そんなことないよ〜」

少女が冗談でしょ、と笑う。

「そう、冗談よ。でもね…映んなかったら将来、自分は生きていないっていう意味にもなるのよ……」



 完



◆ ◆ ◆