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Re: 【生死ぷろじぇくと】 極彩色硝子 【ステンドグラス】 ( No.1 )
日時: 2011/08/06 16:21
名前: 生死騎士 (ID: mk2uRK9M)



── さぁ、早く。
      ・・・急いで、ほら。
          ボクが、壊れ、て・・・し、まう・・・マえ・・・ニ・・・ ──




 序章  ≪緑の迷宮の出会い≫


ざわざわと頭上を風が通り抜けていく。
小鳥の囀りに、かすかに水が流れる音が混じっている。

ここは大森林。
メーゲ国の西に位置する、巨大な森。
その中枢とも言える一本の大木の元に、一人の少年が佇んでいた。

彼の名前はネウロ。
メーゲ国の軍事学校に所属する生徒である。
その手には、人の手には有り余るほどの大鎌。
そんな彼が何故こんなところにいるのか・・・

『大森林に宿る神とその眷属たちよ・・・』

彼は祈っていた。
否。
彼は自身の魔力を開放しているのだ。
その証拠として彼の身体が眩しいくらいに発光し、少しずつその輝きが強まっていく。
人語とは思えないような言の葉の数々が、彼の口から零れ落ちる。

『我、その力にひれ伏し、その力に恩恵授かるものである』

『我が主の名において、我が魔力の再生を。』

刹那、パリンと言う硝子が割れるような音が響き。
彼の発していた光が消えた。


「・・・ふぅ」

一仕事終えた、というようなため息をつき、ネウロは天を仰ぐ。
どこまでも続く空。
自分が幼少の頃から・・・この力に目覚めたときから、ずっと見続けてきた空だった。

一旦空から目を離し、ググッと伸びをする。
長時間魔力を開放していたせいか、背骨やら腕の関節やらが変な音をたてた。
気が済むまで伸び終わると、再びため息をつく。


「そろそろ帰るか。」

そう呟き、大木に背を向けたその瞬間。
彼の研ぎ澄まされた聴覚は、木の葉が不自然にかすれ合う音を聞き逃さなかった。

「誰だ!?」

素早く鎌を構え、周囲を見渡す。
まだ姿は確認できない。

すると再び、カサッという微かな音。
今度はすぐ近く──大木の上で。

ネウロは慣れた動きで瞬時に掌をその方向に向けた。
それと同時に、彼の目の前に直径一メートル程の魔法陣が浮かび上がる。
空気を通して、相手が動揺するのが分かった。
それでも手加減しないのが、ネウロである。

「名乗らないから殺しちゃうけど、いいよね?」

その台詞が終わるやいなや、魔方陣の中心からとてつもない大きさの竜巻が出現。
そのまま目標へと向かっていった・・・・・・はず、だった。

一秒後、彼は自分の目を疑うことになる。

「な・・・」

あれだけ巨大な竜巻が、四方八方に弾き返されたのである。
そして残ったのは、こちらを写す、大きな鏡だった。

さらにその影から、

「ちょっとタンマ!!別に敵じゃないから!!」

と慌てる赤毛の少年が顔を出す。
少年は一度鏡の前に出ると、パンパンと手を鳴らした。

「いや〜訓練場の大鏡、パクっといて良かった〜」

すると大鏡が一瞬でその姿を消す。


その光景を唖然として見る下の少年と、冷や汗をかきながら彼に微笑みかける上の少年。

これが彼らの初めての出会いだった。