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Re: 【生死ぷろじぇくと】 極彩色硝子 【ステンドグラス】 ( No.10 )
日時: 2011/08/17 22:19
名前: 生死騎士 (ID: mk2uRK9M)



 第一章 ≪戦士集結≫



アスティーニ国魔道軍事学校、校長室。
そこに一人の教師と三人の生徒の姿があった。

教師の名はヴィラ・マッケンジー。
時間操作の魔法を得意とする、女性である。

そんな彼女の後方に控えるは、この学校の優秀な生徒たち。
光と水を操るルナ・クドリフ、水属性の魔法では誰にも劣らない実力を誇るニッカー、魔眼で過去と未来を把握できるフェルナンデス・オート。


彼らはある目的で校長に呼び出されていた。
とは言っても、彼らが校長室に着いてからたっぷり三十分は過ぎているというのに、校長が一向に姿を見せないのであった。

待たされるのが苦手なルナが、微量の怒りを混ぜた声で呟いた。

「校長先生はまだいらっしゃらないんですの!?わたくしも午後の授業がありますのよ・・・。」

「仕方ない。校長も忙しいんだろう。それにお前の次の授業の担当は私だ。」

それをヴィラが厳しいとも優しいともつかぬ口調で宥める。

そんなやりとりをすること十分後。
校長が戻ってきたのだった。



           ***




「それで、校長。なんの御用で私達をお呼び出しになられたのですか?」

校長専用のチェアに座り込む、年配の教師にヴィラは丁寧に問う。
すると校長は引き出しの中から数枚の紙束を取り出した。

「それは・・・」

「先日、魔道五国の軍事会議で決まったことなんだが・・・魔道五国にそれぞれ軍事学校があるのは知っているな?」

「はい。」

魔道五国・・・それは、「アスティーニ」「狗」「サウロ」「レンデ」「メーゲ」の魔法力が特に強い五つの国。
それぞれが平和協定を結び、他の国の脅威をしのいでいた。

そしてその五国が敵国に対抗する軍を作り上げるため、国の金で軍事学校を運営しているのだ。

「実はその軍事会議で、五国それぞれから優秀生徒三人ずつを集結させる命令が各学校に出された。」

その言葉に普段なら何事にも動じないフェルナンデスまでもが驚きの声を漏らした。

「それは・・・」

「五国がそれほどまでに脅威にさらされている、ということですか!?」

彼が言いかけた言葉を、ニッカーがつなぐ。
校長はゆっくりと頷く。

「もう次代の魔道士たちを導入しなければならなくなってしまったというのか・・・」

ヴィラが苦虫を潰したような顔をした。

「それでこの学校の代表としてこいつ等を行かせるんですね。」

「そうだ。」

なお年配の教師──もとい、偉大な魔道士──は落ち着いた声色で話す。

「マッケンジー先生には、その子らをまとめる顧問として行ってきて頂きたいのだ。」

濁った瞳が真っ直ぐヴィラを見つめる。
彼女の答えは決まっている。
ここに呼ばれたときから、薄々感づいていたことだ。

「分かりました。」



そして若き女性教師は教え子を連れ、校長室を──学校を出たのであった。