ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 死神は君臨する ( No.60 )
- 日時: 2011/11/30 21:35
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)
- 参照: 学校が始まりました…大変だー!!
—第三章 見守る少女— 第三章をまとめ読みしたい方の為に
時は、今からざっと遡って三年前——夏。
道路のすぐ近くにある杉林で見つけた、謎の箱。色とりどりの花畑の中に、その箱はまるで灰色の女王様の様に鎮座していた。
——あの箱は何かしら?
木陰からそっと顔を出した私は、思わず独りごちた。それから、好奇心のままに歩を進めた。地べたにはスイートアリッサム、ディモルホセカ、ルピナス、マーガレット、ゼラニウム、薔薇、牡丹等が咲き乱れていた。でも、その間を縫うように小道がこしらえてあったので、可愛らしい花々を踏まずに済んだ。
あの灰色の箱の中身は気になったが、しばらくの間、この花達をじっくり観察することにした。しばらく眺めているうちにふと、私はおかしなことに気付いた。…なぜ、春に咲くはずの花が咲いているのだろう。
私は可憐な薔薇を見つめた。薄い桃色の、美しい薔薇。こんなに美しい薔薇は見たことがない。
「…綺麗な薔薇」
言葉がひとりでに口から飛び出し、誘われる様に薔薇へと歩み寄った。その様子を、陰でひっそりと覗く影があったなんて知らずに。
アノ ショウジョハ ナニヲシニキタ?
ワカラナイ
ナラバ サグレ!
アア
モシ ワレワレノ ケイカクヲ ジャマスルモノナラヨウシャナク コロセ!
リョウカイ シタ
私は薔薇の近くにしゃがむと、柔らかそうな花弁にそっと触れた。ゆっくりと瞳も閉じて、深く息を吸い込んだ。新鮮な空気と甘い香りが鼻孔を満たした。
「そろそろ…あの灰色の箱を開けてみようかしら?」
ショウジョガ ウゴキダシタ ニンムヲ スイコウスル
ワカッタ ケントウヲ イノッテイルゾ……
背後から突然、太い腕が伸びてきた。私は逃げる間もなくその腕に捕まり、その直後のことは勿論、覚えていない。確かなのは、私があの場所に居たという事実だけ。
あの日から私は、恐怖に怯えながらも桐ケ谷市内を逃げ回り、今は安定した良い生活を送っている。大好きな沙羅に会えないのは寂しいけれど、会おうと思って出しゃばればまた振り出しに戻ってしまう。だけど、私は信じている。また、沙羅やレイカとあの坂を上り、二人に向かって手を振れる日が来ることを。そして——
「さわ子」って、呼んでもらえる日が来ることを。