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—桐ケ谷鬼伝説—

　昔々この桐ケ谷には、桐山という大きな山があって、そのてっぺんに恐ろしい鬼が住んでいました。
鬼は毎日、山から下りてきては、人を喰ったり攫ったりしていきました。
ある日、一人の若者が、鬼を殺そうと桐山のてっぺんに向かいました。
しかし、そこには鬼の姿はなく、一人の少女が居るだけでした。
鬼の正体はこいつに違いない。
そう思った若者は、少女を殺しました。
　次の日、若者は目を覚ましました。
桐ケ谷は相変わらず静かで、数人の村人が表に出ているだけでした。
若者は安心しきって、畑仕事に精を出しました。
いつの間にか時は黄昏へと移り変わり、明るかった空が黒く染まりました。
その時、桐山の方から大きな何かが下りてきて、外に出ていた村人を食べ始めました。
鬼です。
若者は側にあった剣を掴み、鬼を素早く切り裂きました。
とたんに、鬼は砂になって空に舞いあがり、山へと飛んで行きました。
若者はまた安心し、寝床につきました。
しかし、その次の日の夜も、鬼は村にやってきました。
若者はまた鬼を切り裂きましたが、次の日も次の日も鬼はやってきて、村人を喰っていきました。
その日から、村人は夜、外に出ないようになりました。