ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【オリキャラ】死神は君臨する【募集開始!】 ( No.84 )
- 日時: 2011/09/23 12:44
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: Pmy7uzC3)
- 参照: 学校が始まりました…大変だー!!
—第四章 三人目—第四章をまとめ読みしたい方の為に
——コツ、コツ、コツ
やけに堅い足音が、時を刻んでいるかの様に続いていた。足音の正体は一人の少女で、栗色の巻き毛がふわりと柔らかく揺れていた。右手に鉈を握っていて、白いレースやフリルで飾られたスカートの間で見え隠れしていた。
——コツ、コツ、コツ、ン
公園の入り口で少女がふいに立ち止まり、ゆっくりと空を見上げた。空はもう暗くなりかけていた。
「…お前か?俺を、こんな所に呼んだのは…」
滑り台の辺りで煙草を吸っていた金髪の男が、気だるげに言った。少女は小さく頷いてみせ、男のもとに歩み寄った。
「お前みたいなチビが、俺に何の用があって来たんだ…」
男はそう言うと、口にくわえていた煙草を噛んだ。少女は無言のまま男の真正面に立ち、素早く鉈を振るった。
「…殺すため」
地面にぽたぽたと赤黒い血が垂れ、男はスローモーションのようにゆっくりと仰向けに倒れた。その顔は衝撃に歪み、くわえていた煙草が宙に舞った。
「はあ…はあ——終わった——終わったよ——」
少女は切れ切れに言うと、大量の血がついた鉈を握ってその場を去って行った。
——コツ、コツ、コツ
帰り道も、規則正しい足音を刻んでいく。自宅までそれほど遠くないので、少女は街の景色をたっぷりと楽しんだ。
やがて住宅街に差し掛かると、別の少女が手を振っているのが見えた。
「あっ…さわ子!迎えに来てくれたの?」
「うん」
さわ子と呼ばれた少女は微笑んで、ゴスロリ服の少女にチラリと目をやった。
「レイカちゃん。えっと…殺せたの?」
さわ子は気まずそうに言って、返り血が沢山ついたレイカを見つめた。レイカは頷き、
「上手くいったよ」
と呟いた。
「そっか。じゃあ、帰ろう」
さわ子は優しく言うと、レイカの手をつないで歩き始めた。
レイカとさわ子は家の扉を開けると、靴を脱ぎ始めた。廊下もリビングも、どこもかしこも甘いお菓子の匂いが付きまとってきた。二人はお気に入りの柔らかいソファに身を沈め、目の前のテーブルに資料を広げ始めた。
「レイカちゃんが今日殺したのは、藤田希白という男の人よ」
さわ子が金髪の中年男が写った写真を指さしながら言った。それから、次に長髪の男の写真も指さした。
「昨日は山中朱里で、一昨日は川島竜治を殺した。だよね?」
さわ子が聞くとレイカは、ぱさぱさのスコーンを紅茶で流し込みながら頷いた。
「そう…いよいよ核心に近づいてきたわ…四天王は残り一人よ。北城アカデミーも動き出すに違いないわ!」
北城アカデミー——
表向きは世界の謎を解明するために走り回る、科学者・冒険家で構成された組織で、今まで数々の功績を上げてきた。組織には何百人もの人員と三十年の歴史が厚く取り巻いており、その中心に居るのはレイカの父親であり現在の北城家当主・北城龍之介と四天王である。四天王は山中朱里、川島竜治、藤田希白、飯島玄次の四名で構成され、北城家当主と共に裏である計画を進めている。
「何が何でもお父様の計画を止めるのよ。さわ子」
レイカが真剣な眼差しで言うとさわ子は、「ええ。あんな男の為だけに、世界を壊滅させてなるものですか」と強い口調で言った。
同じ頃、外からレイカの自宅を眺める影があった。栗色の柔らかい巻き毛に、桃色を基調としたロリータ服を着こんでいる少女だ。
「お姉様…」
少女は悲しげに呟き、ガラス越しに見えるツインテールと茶髪の少女を見つめた。
——長いこと探していた。こんな所に居たなんて!
少女の内にある何かが叫んだ。今すぐあのガラスに近付いて姉の姿を良く見たかった。その時、茶髪の少女がロリータ服の少女——北城エリカに気付いた。茶髪の少女はツインテールの少女をつつき、エリカを指さした。
「レイカちゃん、誰かいるわ!」
そう言っているのが微かに聞こえた。ツインテールの少女は急いでガラスの窓を開け、大きな声で言った。
「エリカ。エリカなの!?」
エリカは苦笑いを浮かべながら頷き、囁いた。
「久しぶり、レイカお姉ちゃん」