ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 空蝉は啼かない ( No.17 )
- 日時: 2011/08/15 21:02
- 名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
- 参照: http://ameblo.jp/kaenclone
鬼灯さんが、ピタリと行動を止める。
先程から床を何かの合図のようにリズムよく叩いているのだが、一向に反応がない。
暫くすると彼は俯き、舌打ちを打った。
「あの怠惰閻魔が……」
いいのかそんなこと言って。
鬼灯さんは苛立ちを前面に押し出している。 閻魔様からの応答がないらしい。
そして、犬が何かを嗅ぎ付けたように鬼灯さんが顔を上げた。
「嫌な奴らが来ますね……、怠惰野郎のお陰で」
「結構グイグイ言いますね」
刹那、目の前を筒状の風が通り抜け、俺の前髪が数本切り落とされる。
冷や汗を拭う暇なく窓を見ると、カーテンに包まれた少女が脱出しようともがいている。
一言で言うと、間抜けだ。 あれが鬼灯さんの言う嫌な奴だろうか。
そのうち、空を歩く金髪の男がカーテンを掴み、破り取る。
……空を歩く?
「天界の使いですか」
「いいえ、天原の駒でーす」
某CMのように鬼灯さんと金髪の男が会話(か?)をする。
少女が体に纏わりついた破れたカーテンを剥ぎ、姿を現す。
俺を見つめて、近寄ってきた。 それに構わず二人は喋り始める。
「初めまして? 閻魔の第一補佐官、鬼灯サン。 天原の駒のゴールドです」
鬼灯さんが顔を顰めて、彼を睨む。
その間に少女は立ち上がっている俺の腰に腕を回し、腹に顔を埋めた。
ゴールドが少女を見つめ、何かを言おうとするが彼女の言葉によって遮られる。
「やっほーお久しぶり覚えてる? あのねえわたしずっとキミを探してたんだよやっと会えたなんでキミを追いかけてたのか自分でも分からなかったけど今理解したキミやっぱマジで素敵だし綺麗だわキミは絶対わたしといるべき」
「そのマシンガントークやめろ」
顔を埋めたまま喋られて、吐息が腹に掛かって少し汗ばむ。
早口すぎて後半何を言ってるか分からなかったけれど、最初の第一声で知り合いだったことが理解できた。
「ブラック、そいつずっと押さえと」「命令しないでってか離す気ない」
彼らの仲が悪い事も理解できた。
とりあえず少女を支えるのが限界に近いので座る。
「天原の駒が出向くとなれば、厄介ですね。 それに比べ此方はわたしと役立たず一人ですか」
「役立たずって言われても俺巻き込まれただけだからね!」
「そんなキミも大好きだからわたしはおっけいだよ」
「何もしねえなら黙っとけ! つかもう天界帰れ!」
ブラックが頬を膨らまし、「二人一組だから一人じゃ帰れないー」と緩い口調で反論する。
どうやら天界ではチームを組んでいるらしいことが判明した。
少女は先程から俺の膝の上で寝転んだりしている。
「まあいいでしょう」
鬼灯さんは着流しの中に手を突っ込んで、腰のあたりから鞘に収まった短剣を取り出す。
その動作の所為で、胸のあたりが少しだけ肌蹴た。
それを丁寧な手つきで直して、鞘から剣を抜く。
「それでも彼を取られるわけにはいきませんから」