ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 空蝉は啼かない ( No.24 )
- 日時: 2011/08/22 11:36
- 名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
- 参照: ※ちょい変更
「え、鬼灯クンそんなことんなってんの?」
その知らせが来たのは、目の前に高々と積まれた書類の山の処理をしている途中の事。
自分の第一補佐官が、天原の駒と争いをしているというものだった。 それも、一人の少年を賭けて、だ。
一枚の紙に目を留めると、そこには鬼灯からの地獄門開門手続きの書類。
「おおおお……っべー、絶対怒られんねコレ」
書類の端に自分の手のひらと同等の大きさの印を力強く押す。
苦笑いで隣にいる郵便ガラスの嘴の前に、三つ折りにされた書類を向ける。
「頼むよ。 なるだけ迅速に」
羽を額の前に持っていき、敬礼のポーズをとる。
嘴でしっかりと書類を加え、赤黒くグラデーションを施された天空へと飛び立っていく。
デスクの上で両腕を折りたたみ、その中に頭を埋める。
「怖いんだよなー、鬼灯クン。 さすが、獄卒仕込みの補佐官。 てかもうあれは補佐じゃない、ただのイジメだ」
うだうだと第二補佐官である者に愚痴る。
「まあまあ」と宥めてはくれるのだが、彼も鬼灯に逆らいたくはないので身体を張るなんてことはしない。
「これって行った方がいいわけ? なー、どーだろ」
「行かれてはどうでしょう。 鬼灯様も現在、天原の駒に苦戦しているようですから」
覚悟を決めなきゃダメか……。 とため息をつく。
「分かった。 では後は任せたよ浦島クン」
ゆるゆると起き上がった閻魔に当たった書類の山が、少しずつ崩れ落ちる。
浦島はそれに潰されるが、閻魔はそんなの目にも留めない。
「じゃあ、行ってくんねー」
***
同時刻、ヴァルハラ神殿内。
「ゴールド達が、そのようなことになっているのですか?」
ゴールドに、戦いは命じてはいないはず。
と彼は記憶をたどる。
「はい。 “地上の死者”である少年の期限が切れた、とかで。 本来彼は地獄へと送還される者ですが、我らにとっても役に立つだろうと敢えて地獄側と対峙しています」
天原の駒のグリーンは、彼の質問に迷うことなく答えた。
紅茶を彼の目の前に差しだし、受け取ってもらう。
「閻魔様は、私にとっても良き人で、対峙したくはないお相手なのですが……」
「上からの命令ですので。 私情で動かれては困ります」
それは、そうなのですが。 と苦笑いでグリーンを見る。
彼はため息を一つ吐いて、重い腰を上げる。
十字架などの装飾品が思うよりかなりの重しになっており、動くのも一苦労だ。
「では、私が行ってきましょう。 ゴールドには、私の許可なく戦闘へ赴いたことをきつく叱っておかないと」
「行ってらっしゃいませ、レーダ様」
二人の長が同時に地上へと降り立った。