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Re: 空蝉は啼かない ( No.33 )
日時: 2011/08/23 17:44
名前: 紫雨((元:右左 ◆mXR.nLqpUY (ID: 8hgpVngW)
参照: http://ameblo.jp/kaenclone





思えば、俺は何も知らないことだらけだ。
鬼灯さんが何で俺の前に現れたかなんて知らない。
戦闘だけなら他の屈強な、大人の男性とかにすればいい。

ゴールドだって、なんで俺を狙う?
ただの地獄への敵対心なんかではないはずだ。
ブラックがなぜ俺を知っているかもわからない。
俺は、彼女と会ったことはないはず。

「んあっ!?」

“何か”に首を噛まれ、俺の皮膚に流れ出た液が染み込む。

「ちょっと、」

ブラックが“何か”を俺から剥ぎ取り、捨てる。
下を見るとそれは白蛇で、牙から紫の怪しい液体が滴り落ちる。
彼女は両腕で俺をきつく抱きしめ、閻魔様を睨む。

「わたしのもんに何してんの? 殺されたい?」

閻魔様はにこりと微笑む。
が、その笑みが一瞬で崩れ、ブラックの額に御札のようなものを貼り付ける。
ブラックは体をびくつかせ、閻魔様を一層強くにらむ。
猫のように手を丸め、爪で御札を剥がそうとする姿はなんともかわいらしいが、本人はとても必死だ。

「んー、んー! むぎっ、にゃー!」
「ブラック、諦めなさい。 天界に帰りますよ、早めにソレを解かなければ」

ゴールドはブラックを肩に担ぎ、指で天界側三人を囲むように文字を書き連ねる。
俺には何が書いてあるかなんてさっぱりだが。

「レーダちゃんまたねー。 滅多に会わんけどー」
「閻魔様も、お元気で」

ゴールドが文字を書き終わると、レーダ様が此処へ来たように、螺旋状の風が三人を包み消えてった。

「さあ。 こうなるとキミはこっち側に来るしか無くなったわけですけど……」

どーしよ。 と閻魔様が鬼灯さんに言う。
鬼灯さんは息を精一杯吸って、それを全て吐き出す。

「なにそのため息!? そんなにあたしが嫌いかー!」
「…………好きか嫌いかで言えば、殺したいほど大嫌いです」
「好きか嫌いかじゃねーし!」

全然ノリについていけないんだが。
というか二人の温度差が激しい。

「ま、帰ろうか。 篠崎朔乃だっけ? キミ、は……ちょっと自殺でもしてきなよ」
「なんでスか!? 流れ的に普通に行けるんじゃないの!」
「自殺はねー、結構地獄的に重い罪のところに行けるからさー。 まー地獄に来てしまえば生殺与奪の権はあたしにあるしー、だいじょーぶさね」

今なら鬼灯さんが「怠惰閻魔」と言った気持ちがかなり分かる気がする。
後ろから肩に手を置かれ何かと振り向くと、鬼灯さんが諦めろという顔をしてきていた。
閻魔様にクイッと爽やかに親指を窓の外に向けられ、俺の死に方は「自殺」一択となってしまった。



「なかなか面白い子だからね、キミは」







                                     To Be Continued...