ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 呪蝶屋 ( No.5 )
日時: 2011/08/12 14:14
名前: 夜湖 (ID: JkVnDcbg)

「そう…。そんなことがあったのね。」
少女(もしかしたら大人かもしれない)は、大きな花瓶から沢山ある黒薔薇を1本抜き、僕に渡した。
「それを数回回してみて。」
少女の言う通り、数回回した。すると…。
「うわ!どうなってんだ?マジック?」
真っ黒な黒薔薇が、血の様な赤い色をした蝶になった。
「恨み、封じる…。その前に、交換条件をしない?」
「交換条件?」
「どういうことだ、呪怨。」
魔法のオスネコが喋った。ネコの言葉から、普段は交換条件はしないのだろう。
「貴方の様な恨みが強いお客様は、100年やっているけど1人もいなかった…。
 だから、貴方に店員になってほしいの…。」
「て、店員!?」
「呪怨、何言ってるのよ!人間を店員にさせるなんて…。」
「ここに居れば人間から魂が離れるわ。そうすれば、人間じゃなくなる…。
 自分が人間だということにも恨みを持っているのでしょう?」
「…。」
確かに僕は人間だということにも恨みを持っている。
だが、誰がそんな話を信じるか?そもそも「100年やっている」はずが無いだろう。
だが…。
「…店員にさせて下さい。」
僕はこの世間離れした店に居たくないと思っていながら、そう言ってしまった。
自分が人間じゃなくなると聞いて店員になると言ってしまったのだろうか…。
「店員になるには、魂封じを覚えなくてはね。ついて来る?」
「はい。」
そうして僕は『呪蝶屋』の店員になった。