ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彼岸花の花冠(オリキャラ募集!) ( No.15 )
- 日時: 2011/08/12 15:50
- 名前: いさと ◆o4wie.Wyc. (ID: MKBom4Aq)
『第一章 a quirk of fate』
第一話 Yakumo side...
「ヤクモ、ヤクモ!」
「……え?」
俺は気づかぬうちに寝ていたらしい。……しまった。今は大事な会議の途中だ。
俺を起こしたのはイブキだった。ものすごく呆れた顔で俺を見ている。
「あのな……。今、今後のことについて話してんだからちゃんと聞けよ!」
「ご、ごめん」
「ヤクモ、最近なんかボーッとしてるよね、大丈夫? ……もしかして、まだ傷が治ってないんじゃ……?」
「いや、大丈夫だって」
ルリが俺のほうをのぞき込むように見る。
「ごめん。ヤクモ……僕をかばったせいで」
「ハーレーンのせいじゃないって。気にすんなよ」
隣に座っているハーレーンが俺に気遣うように飴玉を差し出した。ありがとう、と俺は受け取る。
先日、人間が対獣龍用に改造した弾丸が右肩にあたった。そのせいか、傷の治りが遅く俺自身も微熱が続いていて今も少ししんどい。
「……で! あいつはどこ行ったんだよ?」
「あー、ヒスイ? さぁ……?」
ルリがイブキと目を合わさないように泳がす。
その時、
「我ならここにいるが?」
長い黒髪を躍らせながらヒスイは部屋に入ってきた。
「ヒスイ! 今日は大事な話があるからどこにも行くなと言ったろうが!」
まったくどいつもこいつも……。とイブキはブツブツいってひとつ咳払いをした。
「じゃあ、説明するぞ。……昨日、斥候から連絡があった。エージェント達が南北に別れて俺らの補給路を断とうとしてる」
「南北にある補給路が……!?」
ルリは驚いて机を叩く。
「今、僕たちと人間達の領土は半々だからね。向こうも焦ってるんじゃないかな……?」
「多分な。それで俺たちは南北に別れて人間達を食い止める。……とりあえず俺とルリで一番でかい補給路がある南へ行く。北の方はハーレーンだけで大丈夫だと思うが……行けるか?」
「うん……。僕一人でも平気……」
「わかった。小隊を率いて行ってくれ。ヒスイ、お前は敵の動向を探ってくれ」
「……わかった」
ヒスイの応えを聞いた後、イブキは俺に向き直った。
「ヤクモ、お前はここに残れ」
「あ? ……なんでだよ」
「まだ本調子じゃないんだろ。体ぶっ壊されたら迷惑だからな。お前はアレース10ノ神の中で一番強い力を持つ、だからお前を失うわけにはいかない。……もちろん親友だからという意見もあるがな」
「うん……ヤクモの分まで僕頑張る」
「そうよ! あんたはいつも無茶しすぎだから休んでなさい!」
「ゆっくり休んだらいい。まぁ我の知ったことではないがな」
「わ……わかった」
俺は皆の意見に甘えて本拠地で休むことになった。今日の夕方にはイブキもルリもハーレーンもヒスイも旅立つことになる。
……他のアレース10ノ神はどうしているんだろう。王の命令で動いてるんだろうか。まだ微熱があるせいか、頭がボーッとしてしまう。また“あの夢”を見てしまうような気がする。もう思い出すのがつらい……。思い出したくない……。
そう思ってたらまた眠気が俺を襲った。
