ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彼岸花の花冠(オリキャラ募集!) ( No.21 )
- 日時: 2011/08/14 16:49
- 名前: いさと ◆o4wie.Wyc. (ID: abkT6QGo)
第三話 Yakumo side...
微熱が続きでベットで寝ていたのに、なにやらギャーギャー鳥の鳴き声がうるさくて、目が覚めた。
「ん……? あぁ、ヒスイから獣龍鳥がきたか……。なになに」
本拠点にいる俺の元へヒスイが敵の情報を伝えるために送った獣龍鳥がきた。獣龍鳥は言葉を使って、俺たちに知らせる。簡単に言うと“喋る手紙”みたいな感じだ。
ヒスイによると、『敵の数は10人ほどの少人数部隊。ANも確認。それから』
「……それから?」
なぜか途中で切れている。おいおいなんで大事なとこなのに途中で獣龍飛ばしてんだよ!
「またヒスイのやつサボったのか……」
とりあえず、帰ってきたら続きを聞かなきな。……なんか部屋に篭って寝るのも疲れた。体も少しはマシになったし、ちょっと外の空気でも吸ってくか。……イブキ達には内緒にしないとな。後でうるさく言われるし。それと周りの奴らも。俺のこと抜け出さないように見張ってるしな。
俺は他の者に見つからないように、二階建ての窓から飛び出す。
華麗に着地し、寝転がって空を見上げた。星が綺麗だ……。あー、やっぱり、外はいい。戦争なんかしてるって嘘みたいな暗くて静かな森の拠点。ここは俺が気に入っている拠点でもある。
ふと、考えた。なぜ、王は戦を仕掛けたんだ?俺は人間に敵意を持っていない。イブキだってハーレースだってそうだ。……ヒスイは興味がないんだと思うけど。過去がなんであれ、大切なのは今じゃないのか? 俺は自分の立場を利用して内密にだけど子ども達に人間と仲良くするように話たことがある。
——“共存”。今回の戦いで共存は……できないだろうな。余計に人間が恨みをもつだろう。
しばらく空を眺めて考えていたその時、茂みに人の気配を感じた。今、襲われたらまずい。マッシだとはいえ、体力がかなり奪われている。加減できずに殺してしまうかもしれない……。俺はゆっくりと起き上がり、辺を確認する。
「おい、そこにいるのは何者だ」
声をかけてみたが返事がない。俺の気のせいだろうか?
そう思ったが、奥から一人の人間が出てきた。
「そう、敵意をむきだすな。勝手に入って悪かったな。……ちょっと森を抜けられなくなって」
藍みがかかった黒の短髪の目付きが鋭い男が、俺に声をかける。
人間が獣龍族のところにどうどうと……。不思議とこの男からは敵意を感じなかった。他の獣龍族に
見つかる前に、森から出してやらないと。
「森を抜けられなくなったのか……。俺でよかったら案内しよう。ここにいては他の獣龍族に見つかる。大丈夫だ、俺は人間を嫌っていない。し、こっちから滅多なことがない限りては出さない」
「へぇ、あんた人間を嫌ってないのか」
男は意外そうな顔をし、紹介がまだだったな。と言葉を付け加えた。
「俺はレイス。旅人で——革命家、とでも名乗っておこうか」
「革命家?」
レイスと名乗る男はそうだ、と言い、続けて俺に言った。
「——俺は人間と獣龍族との共存を望んでいる」
その言葉に俺は驚きを隠せなかった。普通、いやかなりの確立で人間は俺たちを嫌う。そして獣龍族も人間を嫌う。
それは昔からの因縁。気の遠くなるような昔、人間と獣龍は大きな戦いを繰り広げ、結果人間が勝利した。争いに敗れた獣龍族は大陸から追いやられ、迫害されていた。
そんな歴史があるのに、このレイスという男は共存だと……。俺と同じ考えだと……。
「ふ、ははは! 面白いな、レイス! 俺も共存したいって思ってるんだ」
思わず笑ってしまう。まさか同じ考えをもつ者が、しかもそれが人間だとは。
まぁ、そんな事王は許さないと思うけど……。人間でも同じような考えを持ってる奴はいるんだな。
「獣龍も共存したいと望んでるのか。……そうだ、お前の名前は?」
「あぁ、名乗るのが遅くなった。俺はヤクモだ。よろしくな、レイス」
俺はレイスに手を差し伸べ、握手をする。だが、レイスは怪訝そうな顔をした。
「ヤクモ……? まさかヤクモって“アレース10ノ神”の!?」
「そうだけど」
「まさか……! 獣龍の中で一番強い力を持つ者が共存を望んでるなんてな……」
「ははっ。……実を言うと俺も初めは人間を嫌ってた。……だけど、何年か前にメッセージボトルを
拾ったんだ」
「メッセージボトルを?」
「そこにはこう書いてあった。『私はもう永くない命です。だから死ぬ前にこの手紙に記しました。いつかこの手紙を拾った誰かがこの世界を変えてくれることを祈って。私ではダメだった。世界を変えられなかった。この手紙を拾ったあなた、どうか獣龍族を恨まないでください。人間を恨まないでください。私たちは同じ“人”です。姿かたちは違えど、同じ人なんです。そのことをずっと訴えてきましたがダメでした。……いえ、一度は人間も獣龍族と共存を願いしました。ですが、何者かに邪魔をされてしまいました。そして私も……。どうか、あなたは世界を変えられなくても偏見をもたないでください。それだけが私の願いです。——B.G.D』」
「……なんか、分けが分からんな」
「俺も無茶苦茶だと思った。なに綺麗事言ってるんだ、って。でも“人”って書いてある」
「“人”……か。そんな事言う奴なんていないよな」
「あぁ。だから俺は人間を、獣龍族を信じたい。そして共存したい……」
俺は単純だけど、この手紙がきっかけで人間の見方を変えた。
「……なぁ、俺をしばらくお前のところにおいてくれないか?」
突然、レイスが突拍子もないことを言い出す。
「え!? ……俺は別に構わないが……。いいのか?仮にも今戦争中で……」
「構わない。自分の身なら自分で守れる。それに、俺は戦いを好んでいない」
「そうか……なら構わないが」
「あとここの獣龍族ともっと話をしたい」
命知らずだな……レイス。まぁ、俺がそばにいれば仲間達も文句言わないだろう。……問題はルリか。