ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Ebony girls dual Fencer 企画進行中 ( No.13 )
- 日時: 2011/09/03 12:42
- 名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
階段を上り、再び戦場へと舞い戻った黎迩とシャルル。二人はおそるおそるといったふうな感じで部屋のなかをのぞくと・・・そこにはいかにもその物体が得意とする地形が広がっていて、それに黎迩が顔をしかめる。だがしかし、恐れを知らぬ足取りでその戦場に入っていった黎迩は誰にも止められなかった。シャルルが黎迩のすそをはなすと同時に、黎迩が暴れ始める。山のような形をするそれを蹴り上げ、川のごとき広がるそれを素手で掴んでグシャグシャに丸める。そして———見つける。嫌悪感、不快感を覚えるぐらいに黒光りするその物体を。
光にさらされたその物体は一直線に黎迩にむかって突進してくる。だがしかし、黎迩は今度は逃げない。不屈な魂で、あるいは手にもっているその筒上のなにかに勇気付けられるように、黎迩はその黒光りするその物体に真っ向から勝負を仕掛ける。
以外にも早いその動きで黎迩は手を前につきだして、それにむかってその筒状のなにかの中身を噴射する。それによって黒光りする物体は動きを封じられる・・・がしかし、その生命力はなみではなかった。その一撃必殺であるはずの攻撃をくらったはずなのに、そいつは突然さっきよりも俊敏な動きで暴れ周り、やがては黎迩を通り越してシャルルのほうにむかって一直線に走っていく。シャルルはその姿にヒクッと怯えきった子猫のような反応をして、一目散に駆け出す。だがしかし、その黒光りするなにかはシャルルにも負けず劣らない速度で走り、やがて———妹の、裕香の部屋の前で———その瞬間に開かれた扉に押しつぶされるように———その命を絶やした。
「ん?なんかいまぐしゃっていったけど・・・うげぇ〜・・・ゴキブリぃ?最近見ないと思ってのになぁ」
そしてその黒光りする物体は———裕香がもってきたティッシュに適当につつまれて———トイレに流されるのだった。
かくして、黎迩たちの壮大な戦いの幕は・・・ここで閉じたのだった。
「・・・ってそんなんじゃ終わらせねぇぞ。おいシャルル・・・お前はまず俺の部屋をどうにかしろ」
そういいながら黎迩はシャルルのマントをむんずと掴んでひっぱりながら———シャルルからしたらある意味の戦場に、再び戻っていくのだった。
「・・・【デュアルフェンサー】からの増援?」
「はい。さっきの説明では私がお前のことを守る、ということになっているのですが・・・今回の件はいろんなところがイレギュラーなのです。ですから。もしも【異形】が【異空間時計】を作り出して、出現した場合は・・・私の同僚の何人かが増援に入ると思うので、一応でいいので覚えておいてください」
「・・・イレギュラー。ハッ。俺にとってはお前らのこととかが一番イレギュラーだよ」
「安心するがいいのです。お前はこれまでどおり、【異空間時計】のことなんか知らないかのように生活していただければそれでけっこうなのです。だからなんの支障もないのですよ」
「・・・いや、夜寝るときとかもう怖くて眠れそうに無いんだけど・・・」
そういいつつ、黎迩はコップにはいったお茶をグイッと飲み干す。時刻は夜の十時で、いろいろありすぎて疲れていて、眠りたいけど怖くてというか、自分がいつ【異空間時計】につれこまれて殺されるか分からない今、簡単に眠れないという恐怖のもとから、黎迩は重たいまぶたを無理やりこじあけながらシャルルと話す。シャルルのほうはもとより寝るつもりは無いのだろうか、まだまだ元気いっぱいなご様子で尊大な口調をくずすことなく
「別に寝てもいいのですよ。お前が間抜け面で寝ている間に【異形】がおそってきたら私がつぶしておきますから」
「いや・・・そういわれてもねぇ?」
寝てもいい・・・といわれても、といいながら、黎迩は暇そうに髪の毛をいじっているシャルルを見る。その姿は美しい。とはいっても、まだまだ幼くて、黎迩よりも年下であることはたしかだった。自分のことをあんまりしゃべらないというか、過去を話さないシャルルがいったい何歳なのかはわからないが、それはお互い様なのでどうでもいいとする。だけども、シャルルの外見だけで年齢を判断するに・・・そんな夜更かしができるような年齢とは思えなかった。だから、ついそんな言葉が口からもれてしまったのだ。
「お前みたいな子供が夜更かしなんて・・・無理だろ」
「なっ・・・」
その言葉を聞いたシャルルが固まる。暇そうに髪の毛をいじっていた手が止まり、目が点になってうごかなくなる。それを見た黎迩は、しまった・・・と思う。もしかしたらそういった類のことを気にしている可能性があったのに、つい口にしてしまったことに後悔し、すぐに弁解の言葉を口にする
「な・・・ち、違うぞ。こ、子供は子供でもお前は可愛いし肌なんかぜんぜん荒れているように見えないし夜更かしなんかしたらその美貌に支障がでちまうかもしれないから夜更かしなんかしないほうがいいといっているだけで———」
「こ・・・こども・・・可愛い・・・美貌・・・う・・・うううぅぅぅ!!」
「おわっ!?」
唐突にうねり声をあげたシャルルは、近くにあったプラスチックでできたコップを手にとって黎迩にむかって投げつける。この表情は怒りに震えているようにも見えてちょっと恥ずかしがっているようにも見える不思議な表情だったが、そんなことは関係ない。黎迩は必死の形相でその飛んでくるコップをかわし、シャルルのほうを見る。
シャルルのめじりには屈辱と恥ずかしさからか涙がうかんでいた。それを見た黎迩は再び申し訳ないような気持ちになり
「あ・・・あの、よろしければでいいんだけど・・・年はおいくつでしょうか?」
素直に聞くことにした。