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Re: Ebony girls dual Fencer 【自作絵】 ( No.25 )
日時: 2011/08/30 15:44
名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id


「ちょいとばかしふせときな!!」

「うおおおぉぉ!?」

寧々の掛け声とともに黎迩がよくわからない悲鳴をあげる。
その瞬間、さきほどまで黎迩がたっていたところを無数の弾幕が貫き・・・黎迩の真後ろまでせまっていた今まで以上にでかい、その分血とか肉片とか骨の断片とかがくっきりと見えてグロイが・・・的がでかかったのだろう、すべての弾幕は【犬】の全体を貫いて、血を飛び散らさせる間もなくその存在を消滅させてしまう。
さきほどの戦闘のあと、再び【犬】が黎迩たちを取り囲んだのだ。というよりも、黎迩たちが少しばかり広い道路に出た後直ぐに【犬】たちが黎迩たちを取り囲んで、逃げ場をなくしてしまったのだ。当然のごとく黎迩は絶望しそうになったが、寧々がすぐにそれに応戦して、だいたい四十体ぐらいの【犬】にむかって果敢に挑む寧々のその姿はまるで、戦に赴く女戦士のそれに見えて・・・それでいて、どこか人をもてあそぶ遊び人のその姿にも見えた。なんとも不思議な光景を目にしながらも、半分ぼその数を減らしてしまった【犬】を油断無く見つめながら黎迩は寧々に問いかける。

「・・・あっぶねぇ。それより暁さん、そのあんたの同僚ってのはどこにいるんだ?」

「そうだな・・・だいたい近くにいるとは思うけど、あいつもたぶん【犬】に囲まれてるだろうから助けに入るのはまだ先だと思うぜ」

そういいながら寧々が再び裂け目から弾幕を出現させて、【犬】を二体貫く。だけども、それではさすがに倒せなかったのか、今度は裂け目からオレンジ色に光剣のようなものを二本出現させて———

「ま、この程度の雑魚どもなら私一人でも十分いけるから安心しな!!」

といって黎迩に微笑みかける。ニカッといったふうに無邪気に笑うその姿は黎迩にとって眩しいばかりで、直視することができなかった。
それでも寧々は気にしていないのか、スッと指を動かして、その出現した剣を弾幕によってボロボロになった【犬】にむかって一直線に飛ばす。
裂けている顔の中心にそれぞれに剣がつきささり、グチャリという嫌な音が黎迩の耳を貫く。【犬】がなにかを喚くが、その剣はグググ、といったふうに中にどんどんと突き進んでいき・・・【犬】を完全に中心から両断してしまう。
内臓が、血が、内におさめられていた人間の手のようなものがそれによってダラン、ととびでてくる。その光景はあまりにも残酷で、とても嫌悪感を誘うものだった。だけども黎迩はやはり平然としていて

「じゃぁその同僚の人は?」

と聞く。
それに寧々は、当然だ、といわんばかりに首をかしげて

「大丈夫だって。・・・そうだな。まだシャルルから聞かされていないと思うからとりあえず【デュアルフェンサー】内部のことについて軽くおしえといてやるよ」

という。それに黎迩は正直どうでもいいと思ったが、【化け物】と戦うその組織の内部というのがちょっと気になったのか

「そういえば、シャルルは【デュアルフェンサー支部】が近くにあるとかいってたな・・・」

と思い出しながら言う。
その間にも寧々は指を流れるように動かし、ありとあらゆる所に・・・最初に黎迩が見たほどの大きさの裂け目ではないものの、れっきとした空間の切れ目を作り出し、そこから弾幕を放ち続けている。【犬】たちはその猛攻撃になすすべもなく体に風穴を開け続けていくが、やはりそれだけでは死なないのか、ジリジリと近づいてきている。だがあと一歩というところで・・・決定的な一撃をくらい、その場で存在を消してしまう。

「そうだな、正確にいえば【デュアルフェンサー極東支部】。日本を活動拠点とした【異能力者】たちの組織だぜ」

「じゃぁなんだ、お前らはそこに配属されているやつらってことなのか?」

「その通りだぜ。っと・・・今はまぁそんなことはおいといて、だ、【デュアルフェンサー】の内部・・・【デュアルフェンサー極東支部】
の内部のことを軽く教えといてやるよ」

そういいながら寧々が腕を振り下ろす。黎迩をそれを見た瞬間かがみこんで事の成り行きを見守る。黎迩がしゃがんだ直ぐ真上で寧々が放った光る弾丸が通り抜けていく。その弾は確実に【犬】の脳天をぶち破り、垂れ下がっていた脳みそが派手な音を鳴らして砕け散る。しかし、その脳は見た目だけの代物なので、決定的な一撃にはなりえなかったが、そのひるんだ瞬間を狙って他の弾幕が殺到して【犬】を一体仕留める。

「そうだな・・・まず、【デュアルフェンサー】本部っていうのは、世界中から異能の才能をもつものたちを集めて結成されている組織なんだわ。そんでもって、だ。その【異能力者】の中でももっとも異端でもっとも化け物じみたやつらだけが集められた場所っていうのが、私たちが所属する【デュアルフェンサー極東支部】っていうわけなんだ」

「・・・えーと、それはつまり?」

「だから、だ、私たちがこの程度の、ただの使役されている雑魚どもに負けるはずが無いってことだ。それは私の同僚にもあてはまるし・・・シャルルにも当てはまるんだぜ」

「それはつまり、お前らが化け物だっていいたいのか?」

シャルルに化け物といったときの、あの過剰すぎる反応を思い出して黎迩は申し訳ない気持ちになりながらも寧々に聞く。正直いってしまえば、寧々もシャルルと同じように、化け物と言われることになにか嫌な思い出があるかもしれないと思ったから、それでもちょっとだけ気になり、好奇心に負けて聞かずに入られなかったのだ。もしもこれで寧々がきれて黎迩におそいかかるようなことがあれば———後悔できない後悔をしてしまうかもしれないのに・・・黎迩はためらわなかった。
しかしそれは杞憂だった。寧々は別段気にした様子もなく黎迩のほうをみると、ちょっとだけニヤリと顔をゆがめて、ちょっとだけ意地悪そうな笑顔になり・・・

「あ、そっかお前、シャルルに化け物だって冗談でもなんでもいいからいっちまったな?」

「・・・ま、まぁそうなんだけど、それとこれとは別で———」

「あーあー、別にいいさ、私だって最初あいつにあったときいっちまったからなぁ・・・ついちょっとした【デュアルフェンサー極東支部】に配属された仲間っていうか化け物同士っていうか・・・そんな感覚でいっちまったからな。というよりも、あそこには自分の力が化け物だって自覚しているやつの割合のほうが高いし、そっちのほうが自然だったからしょうがないといえばしょうがないんだけどなー」

「・・・お、思い出してるとこ悪いんだけど」

「わかってるんだぜ・・・私に近づくんじゃねぇ、雑魚が」

その冷ややかな言葉とともに寧々の手が流れるようにして動く。その瞬間、寧々の間じかに迫っていた【犬】が無数の風穴を広げて存在をなくす。一瞬の出来事で黎迩にはなにがどうなったのかわからなかったがやはりそれも寧々の力なのだろうと理解する。
寧々はまるでなにごともなかったかのように手を休まず動かし続け、【犬】を近づけまいと弾幕を放ち続ける。おそらくそれは黎迩には考えられないほど大変なことだろうに、寧々はまるでなんでもないといわんばかりに口を開く。

「まぁシャルルは昔いろいろとあったからな・・・本人がしゃべるまでは私の口からはなにもいわないけど、そうだな、【極東支部】は化け物ぞろい・・・いや、【異形】をも圧倒するほどの力の持ち主しかいないっていったほうが自然かな?」

「じゃぁ・・・なんでその、圧倒的な力の持ち主は【日本】に集まるんだ?」

黎迩がそこでもっともな質問をする。それは一言でいえば残酷で、一言でいえば物事の確信をついていて、一言でいってしまえば、誰も答えられないものだった。そう、それが【デュアルフェンサー】で長年戦い続けてきた戦士でなければ・・・誰も答えられなかっただろう。
日本を舞台として戦い続ける・・・極東支部の人間でなければ。
寧々はニヤリ、とそこで、ひどく・・・ひどく楽しげな顔をする。それは狂気にも似たなにかで、黎迩はその笑みにゾッとする。だがその狂気にも似た笑顔をした寧々は、さもおもしろそうに、さも当然かといわんばかりに・・・口を開く。自身の経験を語るように・・・、自分のお気に入りのおもちゃのことを語るかのように———

「【最強の異形】・・・。【凶悪な異形を引き寄せる力をもつ形】・・・【白夜】が日本にいるからなんだぜ」

その瞬間、寧々が生み出したいくつもの切れ目から巨大な弾幕が飛び出す。それぞれが【犬】一体一体に飛んでいき、すべての【犬】を浄化、あるいは消化していく。【犬】たちはなす術も無くその弾幕によって体を引き裂かれ、四肢を切断され、血を飛び散らせながら存在ごと吹き飛ばされる。それを放った寧々はさもおもしろそうに、再び言葉を紡ぐ

「その性質は謎、見たこともないし触れたことも無い、だけど【極東支部】の誰もが目標とする【異形】・・・そいつの討伐こそが【極東支部】構成員に当てられた使命なんだぜ」

そして・・・最後に残った【犬】を———指を操り、境界の扉を操り———そこから生み出された光の弾幕で、貫く。
すべての【犬】を殲滅した寧々は、まるで何事も無かったかのように黎迩に振り向く。その姿は一般人である黎迩からみると、やはり普通の人とは違う、狂気に似たなにかを宿していたが、それは一瞬の出来事で、すぐに寧々はおちゃらけた雰囲気に戻る。だがしかし、寧々が紡いだ言葉の半分も理解できなかった黎迩は、その言葉の意味を理解しようと頭をかかえるが、理解できないものはしょうがないとあきらめたのか

「・・・よくわかんないけど、いろいろ大変なんだな」

と適当なことをいう。
それに寧々は心外だ、といわんばかりに胸をそらし、フン、と息をはく。

「まぁいいんだぜ、ただの人間は本来記憶するはずのない情報だからな。忘れてくれてかまわないんだぜ」

「・・・一応覚えておくよ、でもその情報が必要にならないことを祈ってるよ」

と、黎迩は自分がこれ以上【デュアルフェンサー】とか【異形】とかと関わりたくないと直接ではないが、その意味が思いっきり込められた言葉をはく。たけど寧々はなぜか意味深な表情を作って・・・

「さぁて・・・それはどうかな?なんだぜ」

まだまだ続く【異空間時計】の空・・・色が完全に夜の色、正常な夜の色ではなくなってしまった空を見上げながら、黎迩は手を仰ぎ、どうして自分がこんなことにまきこまれないといけないんだといわんばかりのため息をはき・・・とっととこの【非日常】から抜け出したいぜ・・・と若干寧々の口調が移ってしまったかのような言葉をはき捨てながら・・・シャルルとの合流にむけて歩き出すのだった。
その後ろ・・・まだ意味深な表情をつくっていた寧々が・・・不意にまじめな顔になり・・・黎迩に聞こえないほどの小さな声でこう・・・つぶやくのだった。

「哀れなやつだぜ・・・【堕ちた剣】に気に入られるなんて・・・な」

「なんかいったか?」

「・・・なんでもないんだぜ!!」

すべては操られた過去の元に・・・歯車が回り始めるのだった。そしてそれは———誰も知ることはない、誰も記憶することはない・・・誰も、抗うことはできない。哀れな運命は———