ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Ebony girls dual Fencer 参照300 ( No.30 )
- 日時: 2011/09/04 00:00
- 名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
そもそもの【異空間時計】の概念や、構成などがわかっていない今この現状でも、経験をつめばそのくらいの情報はつかむことができる。
だからシャルルは遠慮をしない・・・相手が【異形】であれば、相手が人間でさえなければ———絶対に、容赦をしないのだ。それがこの世界で生きるための・・・唯一の方法だから。
シャルルは剣を引き抜くと、すぐさま足に力をいれて、ジャンプする。その一回のジャンプで家の屋根を飛び越えて、再び反対側の道にでたかと思うと、その道にはギッシリと【犬】がしきつめられているというなんともいえない光景がひろがっていて・・・思わずシャルルは
「・・・き、きしょくが悪いのです!!」
と、ゴキブリにでも遭遇したかのような悲痛な叫びをあげてしまった。
重力にはさからえないために、シャルルはすぐにその【犬】だらけの道に着地しなければならないのだが、着地できる場所が見当たらない。
シャルルは一瞬の思考の後にすぐに判断する。そう、道がないのなら・・・足の踏み場が無いのなら———作ればいいのだと。
幸いにも【犬】の注意はすべて由詩にむけられていて、その由詩は圧倒的な力とスピード、そして体力で【犬】たちを圧倒していて、その【犬】たとはなす術も無く数を減らしていっている。だからだろうか、【犬】たちは仲間の硬きとかなんだかはわからないがすべての視線を由詩にむけていて、すべての殺気を由詩にむけている。いわば針山状態・・・だけども、その針を向ける相手が鋼でできていたら———鉄壁の防御力、攻撃という名の最強の盾をもっているやつだったら———なんの意味もなさない。さらに・・・その相手の仲間も、同じようなやつだったら・・・?その針山はいったいどうなる?そう・・・答えは簡単。
「全部の針が折れるだけなのです」
そういってシャルルは剣を最上段にかまえながら落下する。そのまま【犬】の背中がマジかまでにせまったところで剣を大きく一振りして、
その反動でくるりと縦に一回転する。背中をザックリと切られた【犬】は、突然の出来事に絶叫しながらその存在を消していく。断末魔さえあげることのできない一瞬の出来事。だがシャルルはその消えた【犬】のことなんか無視して着地した場所で横薙ぎに一回転して剣を振るう。それだけど周りにいた【犬】たち・・・合計五体ぐらいだろうか。がその存在を消して消えてしまう。
【犬】の集団の先頭には由詩が立ちふさがり、中心部にはシャルルがもぐりこむ。逃げ場を失ってしまった【犬】たちはただただ絶叫をあげながらシャルルたちにねじふさがれていき、その数を次々に減らしていく。たかが下僕とはいえども、多ければ多いほど強い、というわけではなかった。【犬】たちを圧倒するシャルルと由詩のその圧倒的なまでの力は・・・いかなる数をもってしても、切り崩せるような代物ではなかったのだ。
「シャルル!!たぶんこの【犬】達がこの【異空間時計】の中の最後のやつらだよ!!」
「なんでそんなことがわかるのですか!!」
「それはもちろん、僕がこの【異空間時計】の範囲内全部を周ってみてきたからさ!!」
「・・・まったく、お前のその行動力にはあきれるのですっ」
「褒め言葉として受け取っとくよ〜っと」
「実際に褒めているのですよこの単細胞!!」
お互いに武器を振るいながら余裕な会話を繰り広げる。シャルルのほうには笑顔までもが浮かんでいる。
さきほどまでとは違う、とにかく時間が惜しいという戦いかたをやめたシャルルは、一体ずつ確実にまでとはいわないものの的確に【犬】の数を減らしていく。由詩はシャルルを助けに入ったときと変わらない、まったく隙のない、体術を連想させるかのような動きで腕に生える刃で敵を切り裂き、時にはバリツという格闘技というのだろうか、それを連想させるような組技で【犬】の間接を的確にはずし、とどめをさすといういわば一人連携を決めていた。
圧倒的なまでの数をほこっていた【犬】たちはもう最初のころの数とは比べ物にならないほど少なくなっていた。それはもう、一分もたっているかたっていないかというほどの速度で繰り広げられたシャルルたちの圧倒的なまでの攻撃によるものが原因といえるが・・・すでに【犬】たちのその数は、十体にまで減らされてしまっていた。そう、一分もたっていないその時間で・・・シャルルたちは、およそ百体以上もの【犬】たちをしとめたのだ。
「それにしても、今回の【異空間時計】の主はよっぽど臆病なんだね〜。僕、こんなに大量の【犬】を見たのは初めてだよ」
「そうなのですか?・・・まぁそんなことはいいとして、です。たしかにこの【異空間時計】の主は臆病者ですね・・・そうでなければ、ただのチキンですね」
「どっちにしろかわんないじゃん?」
「う・・・うるさいのです!!」
そんなふざけた言葉をはいているが、たしかにこの事態は異常といえば異常だった。こんなに【犬】を絶やしても現れない【異形】の本体。
実際いろいろといっているシャルルでさえ、ここまでねばる【異形】を見たこともないし聞いたことも無かった。そのうえ、捕食する対象であるはずの【黎迩】ではなく、シャルルのほうに大量の【犬】をよこした。つまるところそれは、シャルルの足止めが目的か、それともシャルルを排除しようとしたものなのか・・・それはよくはわからないけれども、ひとつだけ分かることがある。黎迩が今この瞬間では【犬】におそわれていないということだ。
・・・もしかしたら、という考えがシャルルの頭によぎる。そう、もしかしたら黎迩はもう喰われていて・・・あとに残ったシャルルたちをただこの【犬】たちは排除にきているんじゃないのか、と。
一度よぎった不安はぬぐえない。シャルルは少しばかり剣を握る手の力を緩めながらも戦いを続ける。実際問題、寧々が黎迩と合流というか対面して、助けてくれているのならばそれはそれでありがたいのだが、黎迩は自分の手で守らなければならないと決めたシャルルにとってそれはちょっと好ましくない。でも今この現状でそんなことはどうでもいいとして、もしも・・・寧々が黎迩と合流していないで、黎迩が【犬】に喰われていたら———
そんな不安がシャルルの頭をよぎったとき・・・