ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Ebony girls dual Fencer ( No.4 )
- 日時: 2011/08/15 18:48
- 名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
「おう夜峰、一緒に帰ろうぜー?」
昼休みの喧騒がなにごともなかったかのように、時間はすぎて、放課後、黎迩の隣に座っていた力也がそういう。黎迩はそれにちょっとだけすまなさそうな顔になって
「すまん、今日はちっとばかし商店街いかないといけないんだわ」
「あー・・・なんか前にもいってたな、たしかお前の好きなアーティストのCDが発売だったんだよなぁ・・・よし、なら俺もついてってやるよ」
力也が胸をはってそういう。それはただたんに暇だったために言った発言なのかもしれなかったが、正直黎迩は、一人でいくよりはこいつといったほうがつまらなくはないかも、とか思っていたりもして、だから別段断る理由もなかったから
「きてもいいけど、べつになんもないぞ?」
「いや、ちょっぴり俺もCDとかたしかめたいし、ちょうどいい機会だからな。」
黎迩がちょっと気だるげにしながらも椅子から立ち上がり、鞄をとる。それにつられるようにした力也も椅子から立ち上がる。ちょっとだけ夕暮れに染まった外を一瞬だけ見た黎迩は、部活だといってさきにいってしまった遥の席を一度だけ見て、まぁ平凡もいいかもね、とか再び現実を逃避するかのようにして頭の中でつぶやく。なにかをしなければならない。なにかをしなければ自分が自分ではなくなってしまう。その対象が剣道で、剣道で夢をつかもうとした。だけどそれがなくなってしまった今・・・新たに何かをやらなければならないのに・・・それをしない自分、そしてそれを逃避している自分の姿はひどく・・・穢れているはずだ。なのに、遥はどうしてかそんな自分に好意をよせてくれていて———そしてそれをみて自分は———また、現実を逃避してしまうのだ。だから・・・また、それを黎迩は、頭の中から消し去る。
「・・・どうした?夜峰、どこか悪いのか?」
「・・・いや、なんでもな———」
「ああ、そうか!!頭が悪いのはもとからだったか!!」
「お前・・・死にたいようだな」
「うるせぇリア充、裏切り者・・・思い出したらムカムカしてきたな、おい、残っているお前らだけでもいい!!すぐに【撲滅裁判】の格好になってこいつのことをぶちのめ———」
「って冗談じゃねぇぞ!?」
昼間の悲劇?を思い出した黎迩は一目散に鞄を持って走り出す。その間にも後ろからそいつを止めろ!!とかいう声が聞こえてきて、それに反応したクラスの男子たちが黎迩を止めに立ちはだかるが、それを意図も簡単にすり抜けて黎迩はニヤリ、と笑う。もうすぐそこにドアがあったから。あとはそれを引いて外にでてしまえば、廊下を一直線に走ってあとは外にでるだけだ。そこまで考えたところで・・・黎迩は、絶望することになる。
そう・・・教室のドアの前。黎迩に立ちはだかるようにして現れたのは・・・超ガチムチ、筋肉もりもりのレスリング部の男子・・・竹中
翔太だったのである。
その体格差は相当なものといってもいいであろう。黎迩の身長よりはるかに大きい身長、横幅、そして制服の腕のすそをまくっていなくてもわかるように浮き出ている筋肉の筋、足の太さなんていってしまえば黎迩の倍ぐらいあるといってもいい。
そう・・・そこを通り抜けるのは、ある意味では不可能といっても過言ではなかった
「よし、いいぞ竹中君!!そのまま夜峰を抱擁しろ!!」
「くそっ・・・冗談じゃねぇからな!!」
こんな硬そうな男に抱きつかれてたまるかといった勢いで、黎迩は駆け出す。その瞬間に、竹中がサッカーのキーパーのような構えになって、黎迩を通さないといわんばかりに目を細める。だがしかし、黎迩はそれにまるで萎縮したかのような気配を見せることなく———そのまま、広げられた足にむかってスライディングし、又を抜けるようにしてすべり、そのまま教室のドアを足で無理やりこじ開けて、廊下にでるやいなやすぐさま体制を立て直して、走り出す。
竹中は呆気にとられたといわんばかりの顔になり、ほかの黎迩を止めようとしていた男子生徒たちも、黎迩のとっさの判断力と行動性を見て、呆気にとられて動けなくなってしまうが———
「お・・・お前ら!!夜峰を追え!!絶対に逃がすんじゃないぞぉっ!!」
一足早く冷静になったといってもいいのかわからないけどとりあえずは戻った力也の声でみんなも我に帰る。そして黎迩ででていった扉にむかって一目散にかけだして、廊下にでる。当然のように黎迩の姿はもう廊下にはなくて、完全に逃げられたことが証明された。
「さ・・・裁判長!!被告人に逃げられました!!」
男子生徒の誰かがそういって、力也のほうを見る。力也は、それに心底ガッカリとしたようにうなだれて———
「しょうがない・・・今日はあきらめるか。各自撤退、今日の目標をロストした以上、明日に持ち越さなければならないからそのときまで体力をのこしておくように、以上だ!!解散、解散だ!!」
商店街に行く約束をさっきしたばっかりなのに、それまでも持ち逃げされてしまった力也は、本当に悔しそうな顔をしながら、そう悲痛に叫ぶのだった。
そして・・・黎迩は後悔することになるのだ。ここでもしも、黎迩が力也たちに捕まって、処刑というなの拷問をうけていれば、もしかしたら———あんなものにまきこまれてしまうことなんて、なかったかもしれなかったのに・・・どうして———こんなことになってしまったんだろうと後悔することもなかったのに———どうして———こんな大変な思いをしなければならないんだと絶望しなくてもすんだのに———そういまさら思ったところで、動き出した物語・・・歯車は、誰にも止められない。それを作り出した本人でさえ———それを動かす———本人で、さえ。