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Re: GUARDIANS 感想・ご意見どんどんお願いします! ( No.6 )
日時: 2011/08/22 00:48
名前: ホッケ ◆.Nrl/mk7Fw (ID: XL8ucf75)

第2章 ≪始動—スタートアップ—≫①



天城は車の中から双眼鏡で目標の男を視認した。

「こちら天城。ターゲットを確認」

『OK。お前の位置は腕時計のGPSで常に確認してる。頑張れよ、倫太郎』

イヤホンからアレックスの軽い調子の声が流れる。

「了解。これより潜入するよ」

通信を切り、天城は大きく深呼吸をした。

「潜入作戦か………何年ぶりかな」

男が建物の中に入ったのを確認し、天城は車から降りた。

















「それでは作戦の説明を。捜査は二手に分かれて行います。一方は北野本人の追跡です。彼は加賀達郎と言う名前で日本に入国し、その後も同じ名前を使っていると考えられます。おそらく痕跡はわずかでしょうが………何とか辿っていってください」

斉藤は淡々と作戦の説明を続ける。

「もう一方は獅子の牙の傘下と目される暴力団に対する潜入捜査です」

「暴力団?」

天城が眉をひそめる。

「ええ。獅子の牙メンバーと頻繁に接触している様子が以前から確認されており、早くから当局にマークされていた暴力団ですが……北野の入国を受け、詳しく調べてみたところ、組員は全て高度に訓練された戦闘員であることが判明しました」

「訓練された戦闘員?」

「北野は元々イギリスの軍隊にいた経験があり、そのときに仕込まれたありとあらゆる戦闘術を部下に叩き込んだものと思われます」

「つまり暴力団はダミー組織ってことか」

天城が納得したようにうなずいた。

「その可能性が高いかと。しかし彼らは暴力団とは言うものの、今まで事件を起こしたことは一回もないので、警察を動かすわけにもいかず、今まで放置状態だったのが現状です」

話をする斉藤の表情は険しい。

「なるほど………」

「その点、GUARDIANSは存在自体私と古谷総理大臣しか知る者がいない組織ですので、手間のかかる法的手続きも、確たる証拠も必要ありません。暴力団に奇襲をかけることができます」

「へえ………なるほどねえ…」

卯田は大して理解できていなかったが、うんうんとうなずいた。

「さて……ここまでで何か質問はあるでしょうか?」

斉藤が辺りを見回す。誰からも声は上がらなかった。

「……では、作戦に移ります。どう分かれるかはあなた方に任せます。それから、今後の連絡は全てアレックス捜査官に、メールでの連絡となります」

「何だ、あんたは残らないのか?」

アレックスがパソコンをいじりながら言った。

「私には総理秘書と言う仕事があります。ここに付きっ切りというわけにはいかないので………」

「ふうーん……」

「それでは私はこれで。あなた方の健闘を祈ります」

斉藤は4人に一礼し、背を向けて歩き出した。

が、何かを思い出したように足を止めた。

「ああ、大事なことを一つ忘れてました」

斉藤はスーツのポケットから鍵束を取り出すと、天城に放った。

「これは何ですか?」

「そこにある武器庫の鍵です。当座必要かと思われる装備を揃えておきました」

「………武器」

天城の表情が一瞬暗くなる。

「どうかしましたか?」

「あ、ああ。いえ、何でも。ありがとうございます」

「いえ。では気をつけて」

斉藤はきびすを返し、今度こそビルから出て行った。

「………で、どう別れんの? 俺はアナリストで確定だろうが、あんたらは?」

アレックスが3人に尋ねる。

「それなんだけど………暴力団潜入は、俺1人に任せてくれないか?」

「天城さん!?」

卯田が思わず大声を上げた。

岬も面食らっている。

「…確かにお前が一番この中でできるだろうが、大丈夫なのか?」

「似たようなシチュエーションなら経験したことがある。大丈夫だ。それに潜入捜査はなるべく人数は抑えてやるもんだ」

「………分かった」

天城の言葉に岬はうなずいた。

「卯田、俺たちは北野の偽名を追おう」

「………でも」

卯田は心配そうに天城を見る。

「大丈夫だ」

天城はニッコリと笑った。

それを見て、卯田は納得し、小さく「はい」とつぶやいた。

天城はその言葉を聞くと、武器庫へ向かった。

「…………ずいぶん心配してるようだったが、いいのか?」

岬が見かねて声をかける。だが彼の心配とは裏腹に、卯田は笑顔を見せた。

「大丈夫ですよ。天城さんが笑った時は、本当に大丈夫だってことですから」

















「さて………と」

天城は暴力団のアジト—表向きは工具店となっている建物の前に立っていた。

暴力団のリーダーと目されている男は、木島博という男だ。

天城の目的は、木島を捕らえて北野の情報を聞き出すことである。

工具店に木島がいることは先程車の中から確認している。

「そいじゃ、行きますか」







自らの頬を叩き、天城は工具店の扉を開けた。