ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【ヘル・エッジ】 ( No.3 )
- 日時: 2011/08/25 20:16
- 名前: 斑 (ID: Au8SXDcE)
▼Chapter1〝ファンタジア〟
(二)
青年と少女の瞳には、大きな城と時計塔がある町が見えた。
この町こそが、青年と少女が目指しているサリファ。商人達がいきかう町でもある。世界中の食材が集められて、それを買うために此処へ訪れる人も少なくはない。
青年と少女は、いつも食材を買っている店に向かった。前に先客がいたが、店の店員が直ぐに気がついた。そして、不機嫌そうな顔をした。
「あんたらだね、うちの店員を泣かせたのは」
そう言うのは、ここの店長。顔に髭を生やして鋭い目つきをしているが、心の広い人。多少は値切ってくれている。いつもはこの店長が店番をしていたのだが、前行った時はたまたま違う人間が店番をしていた。そこで少女は「店長じゃないからどんどん値切れる!」と思いこみ、店員が「勘弁して下さい」というまで値切ったのだった。
「本当に、すみませんでした!」
青年は声を張り上げ、頭を下げた。横にいた少女の頭も手で押さえて下げさせた。少女は顔をムスッとさせて納得いかないようだった。
「……ったく、今度はねぇと思え」
店長はため息をつきながら言った。
「本当に…申し訳ありませんでした……」
青年はもう一度言うと、申し訳なさそうに顔を上げた。
「あの……いつものを下さい」
「いつものね。……で値段は?」
「それも含めて」
「あいよ」
店長は店の奥に行き、紙袋を取り出して、いつものを入れて青年に手渡した。青年はズボンのポケットからお金を取り出して店長にお金を渡した。青年は店長にお礼を言うと、少女を連れてその場を離れた。
「ねぇ…今日もまたカレー?」
少女が紙袋を睨んだ。
「仕方無いだろ、アイリーン?まだ、これぐらいしか買えないんだよ」
アイリーンと呼ばれた少女は不貞腐れたよう。
「そのうち『ブレッドはカレーしか作れない』って有名になるわね」
ブレッド、と呼ばれた青年は「それでも結構」と言い放った。