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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺は半分シんでいる─隣には向日葵がある─ ( No.1 )
- 日時: 2011/08/22 18:55
- 名前: 王翔 (ID: 3f2BBQD7)
プロローグ
透明な目に見えることのない、風の塊が夕日の光を浴びてほのかに赤色に染まった丘の上を吹き抜ける。
さわさわと小刻みに揺れる芝生の草は輝いていた。
ただ、ボンヤリと芝生に座っていた俺の傍らには夕日のように赤い髪を風になびかせる真っ白で清楚なワンピースを着た端整な顔立ちの少女が控えていた。
少女は俺の様子を伺うように顔を覗き込んで来て、一人で勝手に頷くと体勢を崩し、俺にもたれかかってきた。
会話もないまま、二人して夕日を眺めるだけだった。
いつもそうだ。俺達の間には、会話がない。
その理由は、二人揃って話すのが苦手だから。話すのが苦手なら話さなければいい。
口下手なせいで、相手を傷付けることもないのだから。
ゴホゴホと少女が咳き込む。
それに対して、何と言葉をかければいいのかすら分からなかった。
話し方を知らない。
話さない……。それが、俺の《常識》だった。
この世界には、常識なんて存在しない。自分で《常識》を作るだけだ。
自分で決めたことでも《常識》には変わりなく、口を出す者はいない。もしかしたら、どこかにいるかもしれないが俺は知らない。
俺にもたれかかったままの少女はにこりと微笑んだ。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
もたれかかっていた少女の身体が軽くなっていた。
呼びかけてみようにも、お互い話したことがないから、俺は少女の名前を知らなかった。
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