ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- しめころす。 ( No.1 )
- 日時: 2011/08/27 21:08
- 名前: さくら. (ID: mtlvkoR2)
- 参照: これはひどい。
苦しい、と。
目が覚めて最初に考えたのはそれで、次に思ったのは自分の首を絞めつける「何か」のことだった。少ししてそれが人間の手だと気付いて、更にその白い手が女のものだという事が分かって、……女?
家に女なんて居ない筈だ。母親はとうの昔に死んでしまったし、兄弟姉妹なんて自分にはいない。父の部屋になら女は居るかもしれないが、わざわざ夜にやってくるとも思えない。そもそも、あの父親が夜に一緒に寝ている女を離す訳がないし女だって離れる訳がないのだ。
考えたくもないことを思った自分に軽く苛立ちながら、首を絞める力が少しずつ強くなっていくのを感じていた。
「……っ、は、」
本当に苦しくなって来て思わず息を漏らすと、何故だか絞める力が少しだけ緩んだ。
……嗚呼、そうか。こいつが居たか。
少し前からこの家と言うよりは自分の部屋に居座っている小さな少年。本当に男かと思う程細く白い彼なら女と間違えても可笑しくない、と緩んだ瞬間に少しだけ見えた髪の色を眺めながらそう思った。
「……あ、」
この、少し驚いたような調子で吐き出された声は自分のものではない。
彼がこうしてわざわざ違う布団で寝ているこちらにやってきて首を絞めたりだとか殺人未遂をやらかすのは最初からあった事なので気にはしていない(慣れるのには時間がかかったが)。
それなのに、どうやらこちらが気にしていない事に気付いていないらしい彼はいつも目が覚めた事を確認するとそれを止める。……途中で止める位ならばやらなければいいのに、とも思うがそれも少し違うらしい(話を聞いた事はないのだけれど)。
恐らく、彼は寂しいのだと思う。
寝ている時に独りになるのが嫌でこうして殺しに来るのだ、と勝手に考えている。本当の所はどうなのか、自分には知る由もないが。
「……」
お互いに何も音を発さないまま少しの時間が過ぎて、一瞬だけ目を合わせた彼はやがておれの上からどいた。なるほど、十代後半の男子が同じ位の年頃の男に跨がって首を絞めている光景というのは客観的に見てもあまり気持ちの良いものではない。
締め付けから解放された反動か、いつも以上に早くなっていた動悸を聴きながら自分でも驚く程冷静にそんな事をぼんやりと考えて大きく息を吐き、そのまま静かに瞼を閉じた。
眠りが浅いおれにしては珍しく、その時にはもう自分の布団に潜っていたらしい彼の言葉にも気付かないまま。
「 」
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これBL板に移した方がいいかな……←