ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 少女、影。 ( No.33 )
- 日時: 2011/09/16 21:20
- 名前: 朝倉疾風 (ID: foi8YFR4)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
殺し屋の言葉に、章太郎は愕然とする。
自分の仕えているモノが人間ではないのだとしたら、何者なのだろう。
「答えてよ。 知ってるんだろう? 相瀬桃夜の秘密を」
突拍子もない事を言っている伊月本人は、至極真面目のようだった。
章太郎は少しだけ宙を見て、見て、見続けて、
「はっははははっははははははははははははははははははっははははは」
腹を抱えて、笑った。
何がおかしいのか分からない伊月は、少しだけ居心地悪そうに舌打ちする。
「何がおかしいんだ」
「人間じゃないって、ファンタジーかよ! そんなんあるわけ無ェだろ! どこぞの漫画の世界でもあるまいし! 厨二病もいい加減にしろ、糞ガキ!」
ヒクッと伊月の頬がひきつる。 ファンタジーだとバカにされたからなのか、ガキと貶されたからなのかは分からない。
だが、彼女は明らかに怒りを堪えていた。
「お前の頭ン中はお花畑か! 殺し屋とか語ってるけど、ただのガキだろうが! あっははははは、おかしいなぁ! こんなに笑ったのは生まれて初めてだぜ!」
「殺す」
短く静かにそう言い、伊月はナイフを取り出して、章太郎胸に深くソレを突き刺した。
口から多少の吐血をし、章太郎が倒れる。
もう息もしていない彼を見下ろし、伊月がその屍の近くにツバを吐く。 死体をどこかに隠そうかと思ったが、やめた。
(どうせ、コレがバレたら相瀬桃夜に殺されるんだろうな。 アタシが)
(でも、あの女が使用人ひとりに激怒するか?)
(まあ、どちらにせよ警察よりも先に相瀬に見つかるだろうなぁ)
能天気にそう考えながら、フラフラと夕暮れの街を徘徊する。
海原伊月。
彼女は、他のどんな殺し屋よりも危険な存在だった。
海原伊月が立ち去って、数十分が経過していた。
「…………俺が死ぬワケないだろ、バァカ」
むくりと、なんでもないように章太郎が起き上がる。
彼の胸には確かに、ナイフで刺され穴があき、そこから血が吹き出ていた。
しかし、傷口はしっかりと塞がり、大量に流れ出ていた血も、もうすでに止血されていた。
(ファンタジー……ねえ)
(本当に、ファンタジーだったらよかたのに)
自分が他人と「違う」ということは、これほどまでに恐ろしいのだと。
章太郎は幼い頃から実感している。 身に溢れるほど、もう知っているのだ。
「桃夜、ごめん……ファッション雑誌、血で汚れた」
彼は、一度死んでいるのだ。
心も。