ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 非行少年隊COLORS ( No.15 )
- 日時: 2011/09/06 21:06
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: Ui5uT1fk)
- 参照: 最近、文字を書き続ける体力が欲しい。
【1】
適当に生きて、適当に死んで、適当に生まれかわってまた死んで。
退路なんて無くて。
僕らは、縛られてるんだ、この世界のシクミに。だから、生きるしかない。死んでもまた、生きなければいけない。
今、生きている。
僕にとってはその事実が一番、苦痛だ。
——この娘、綺麗な顔をしてる…………。
手術、と呼んでもいいのだろうか。僕流の手術が終わった後、僕は彼女の眠るベッドの脇に椅子を置き、彼女の顔を眺めていた。
それにしても、僕の手術を受けて死なない人なんて、これが始めてだよ。頑丈、なのかな。
不思議だ。彼女の顔を見ていると、不思議と顔が綻んでしまう。
「ただいまー」
——あれ。
何分経ったのだろうか。僕は、頭を上げると、机の上に置いてある目覚まし時計に目をやった。深夜二時すぎ。既に一時間が経過している。
——寝て、しまったのか。
溜息を一つ漏らして、声がした窓の方へ視線を動かす。少し、返り血で汚れたTシャツを着た少年が窓枠をくぐって、部屋に降りた。
「ああ、寝てたのか? 起こしちゃったな、ごめん」
僕は首を軽く横に振ると、「出入りは窓からではなく玄関から」と、言い飽きた台詞を吐き出した。彼ははにかむと、Tシャツを脱ぎながら横たわる彼女の方へつかつかと歩いてきた。
「この子、新入り? へえ、可愛いじゃん。生きてる?」
「新入りだよ。大丈夫、生きてるよ」
彼の二つの問いに答えると、僕も一緒になって彼女の顔を覗き込んだ。その表情は、とても安らかだった。今はまだ眠っている。
——まるで、世界の全ての黒を、抜いてくれるような表情だ。
彼は、聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「え?」
僕が聞きかえす。嘘だ。分かっている、聞こえたよ。だけどそれを言ったら、彼女はアノヒトの道具になる。
「いや、何でもない。寝てくる」
彼も、分かっている。声が聞こえていないふりをしていることも、僕が彼女を気に入っていることも、僕が彼女がアノヒトの道具になることを恐れていることも、分かっている。
彼は、優しい。
「うん。おやすみ、シラ」
部屋を出て行く彼に声をかけると、ドアを開きかけた彼が振り向いて、短い返事をした。
彼は、優しい。きっと、僕のことを一番分かってくれる存在なんだろう。彼は、僕を何でも分かってくれる。最高の人間だ。
僕は、彼を自分が作ったという事実から逃げ続ける。