ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 死神の宴 ( No.10 )
日時: 2011/08/31 18:43
名前: まっちゃん★ ◆7W9NT64xD6 (ID: 0cbUjVkJ)

 俺はまずこの街から立ち去る事にした。そして、完全に僕を捨てる事にした。
 名前は「木下次朗」、年齢は三十一歳(前と同年齢)、職業はなくニート(会社をやめるとなると名前を変えるから就活が面倒になる)。
 この簡単なプロフィールで少なくとも一年間は生きる事になる。
 まずは身なりを整えるために近くの大きなデパートにでかけた。ここに来れば大抵の服装は整えられる。
 木下の一つ目のポイント、「おしゃれ」。服もそれを意識して少し高めの物を買う。
 二つ目のポイント、「メガネ」。メガネはおしゃれに見せる基本だと言ってもいいだろう。
 三つ目のポイント、「肉食系」。今までの僕は、草食系だったのかもしれない。そこで、「僕」という言い方も、「俺」に替えなければならない。慣れないが、仕方ないだろう。
 そして、四つ目のポイント、「恋はしない」。君以外の女性と付き合う事はまずあり得ない。君の死の真相をつきとめるために恋は必要ない。
 これで木下次朗という人間を作り出せるだろう。多分一年間は生活できる。

 俺は元の家に戻った。大量の服や帽子、メガネが入った大きな袋をベッドの下におき、ベッドに寝転がった。
 一つだけ問題がある。さっきも言ったとおり、この街から出なければならない。だが、仕事も出来ないなら、家賃も払っていけるはずがない。わずかな貯金も今日の買出しで全て使ってしまった。
 いくら復讐をするにも多少の家は必要になる。それがないとなると、ホームレスしか頭に浮かばない。
 残りの金は大体二十万。それでは食費ぐらいの金にしかならない。それでは困る。ならあれか、買うか?
 家賃という言葉が引っ掛かるのだ。毎月毎月払っていくのが苦痛なんだ。だったら買えばいい。
 一つだけ良い案がある。中古でも済む内容だ。

「キャンピングカー」。それしかない。
 木下の五つ目のポイント、それは「旅人」であるという事。
 隠す事ができる。ホームレスだけは、ホームレスの苦しさだけは味わいたくない。
 また自分の下衆な欲望を出してしまった。
 これでわかったかもしれない。人間に欲望が消えない理由が。

 俺はなんとなく、納得して、午後七時、夕食も食べずに眠りについた。

                                  つづく