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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神的少女は殺戮がお好き ( No.1 )
- 日時: 2011/11/23 19:51
- 名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)
プロローグ 神的少女は元日に
一月一日——元日
空は曇り例年より寒い元日となったが、神社は多くの人々で賑わっていた。ベージュのコートを着た少女は、最前列にいた。ごく平凡な顔で、神社を前にしていた。
(今年もみんなが健康でいられますように。あと、私のまわりが静かになりますように。早く人ごみから抜けられますように)
少女はそれだけを祈ったはずだった。まさかあんなことになるなんて、思いもしなかっただろう。気が狂ったように少女は階段を下り、さっそうと神社から出て行った。すぐ後に、少女の母と思われる女性が追いついてきた。
「そんな走って行かなくてもいいじゃない。」
「私は歩いたつもりよ。それに、あんな人ごみの中っていや。反吐が出るわ」
「反吐だなんて。いいすぎよ」
「そんなことないもの。実際に、出たことだってあったでしょ? さ、帰りましょ」
「えッ、おみくじは? しないの?」
「しないに決まってるじゃない。」
母はりんとしたその声を目の当たりにして、ただただ車にのることしかできなかった。青いコンパクトカーの後部座席に乗った少女は、顔色一つ変えずに、一月の冷たい空気のように、冷たい目をしていた。その冷たい目は、冷たい空気に向けられているように感じた。父母とも、娘がそんな冷たい目をしているなんて思ってもみなかっただろう。なぜなら、彼女が外へ向ける顔は、うわべだけのものだったのだから。そのうわべだけの顔は、あとあと、どれだけ役に立つことか。
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