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Re: 神的少女は殺戮がお好き【予告……?】 ( No.126 )
日時: 2011/11/17 19:39
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: b1kDOJaF)

第十一章 記憶を司りし女神

「何故私の想いに応えてくれない……?」

白いピタッとした薄いドレスを身にまとった女性は、輝かしい玉座に座り、雲との境が無い丸いモニターのようなものを見て嘆く。その瞳には、茶髪の髪をポニーテールに結んだセーラー服姿の少女が映っていた。その少女は暗闇の中のろうそくに照らされ、かろうじて顔を確認することが出来る。

「あやつは……ッ」

息をのんだ。そして立ち上がり、そのモニターのようなものに近寄った。唇を噛みしめ、怒りの表情を見せた。

「死神ッ! 生きていたのか……! 今すぐ下へ降りる準備を!」
「承知しました。記憶の女神さま」

一メートルほど離れていた臣下は、雲の上に立ち空に浮かぶドアを抜けて行った。それから、女性——記憶の女神は考え事をしていた。


数年前——
記憶の女神は、天界にいる神と恋に落ちてしまった。それは、下——人間界にいるときのことだ。まだ少年だった神と、まだ少女だった記憶の女神は神が人間界に降りている時、赤い糸が引き合うように出逢った。やがて少年は天界に戻り、父の元で勉強を再開した。だが人間界にいる前と比べて、とても勉強が身に入らなくなってきていた。それから約一年。当時の神だった父は、少年をまた人間界へ送った。とてもそれを喜んでいるのを見て、父もそれを喜び見送る。それは本当に心の底からの嬉しさで、言葉に出来ないほどだった。
再び人間界へ降りたった少年は、その少女を探した。もう居場所も分からないかと思っていたが、二人は赤い糸が引き合うように再会した。二人はそんなには言葉も交わさず、深い関係では無かった。でも、遠目ではあったが二人は見つめ合い、目を輝かせた。少女は高校三年生で、傍らにはセーラー服を着た友人がいて、少女もセーラー服を着ていた。一方少年はグレーのパーカーに黒目のジーパンを着ていた。どうやら大学生といったところだろうか。二人とも同じ学校にいたのだ。
やがて二人は深い関係を持つようになり、少女は大学を出て子どもを産んでしまった。少年は絶句した。神の子孫たちの間では、こんな規則があった。
——人間と神との子どもを作ってはならない。作った場合も、中絶してはならない。
少年はとても正直な人だったので、すぐ父である神に報告した。父はしばらく考えた後、ある罰を与えた。
——お前は一生人間界に居、その子どもは父であるお前が育てろ。その相手は天界で罰を受けよう。
少年は「全ては僕に責任があります! どうか罰するのは僕だけにしてください!」と訴えた。だがそれは却下され、二人は離ればなれになった。
わけも分からず愛する人と別れることになり天界へ来た少女は、少年の父である神のもとへ連れられた。そして想像を絶する罰を言い渡された。
——神の息子を愛した罰だ。お前は息子の代わりに記憶を司る神となり、記憶を害した者たちを罰せよ。
それがあの女性——記憶の女神の誕生だった。