ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神的少女は殺戮がお好き ( No.138 )
日時: 2011/11/26 09:13
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

太陽の光が反射し、眩しくて目をビル玄関前へと移した。そして玄関口へ歩いていく。ガラスの自動ドアを抜けると、ジーンズにカットソーといった服装の人物に、皆視線を移した。その視線に困惑しながらも、平然を装って受付にいるチェックのベストの女性に話しかけた。
「こちらに“diary company(ダイアリーカンパニー)”はありますか?」
「はい、地下一階にございます。お呼びいたしましょうか?」
「ええ、お願いします。」
「ではあちらで少々お待ち下さい。」

受付の女性は、受付から五メートルほど離れたチェアを示す。女神と、後ろに付いていた臣下はチェアに座り、案内係が来るのを待った。その間、女神は臣下にこう告げた。

「私は“dark company”に行くわ。でも貴方は来ちゃだめ。ここで待っていて」
「ですが……」
「貴方は他人の諍いに入って死ぬべきじゃない。これは私の問題よ。そして死ぬも死なないも私の自由だし、私は女神として責務を全うしたと思っているわ。だから、来てはいけないの。いいわね?」
「でも……」
「もちろん、貴方が女神を守らなかったらどうなるかも分かっているわ。だから、事前に……言っておいたから」

女神は苦しそうな笑みを浮かべる。臣下は女神の決心を尊重することにした。

「分かりました。ですが……」
「もちろん、生きて帰ってくるわ。いい? これは私の問題よ。私たちの事情を知れば、もう終わり。死神によって消されるわ。——もう来たのね、それじゃ」

受付係という名札をつけた女性に声をかけられると、わざとらしいことを悟られないようにわざと大きな声で言った。それを臣下は不安そうな顔で見上げるが、女神はもう意思は変わらないと言うような表情を見せた。

Re: 神的少女は殺戮がお好き【とうとう十一章 ( No.139 )
日時: 2011/11/26 11:19
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

エレベーターの中は明るく、二人しかいないため広く感じられた。「B2」と書かれたボタンは黄色く光り、扉の上の表示板も「B2」を黄色く照らす。エレベーターの扉が開き、暗い廊下が現れた。女神はブルッと震えると、もうちょっと厚着してくればよかったと後悔した。受付係は平然と奥の部屋へ案内し、ドアをノックした。

「柊木華香様がおいでです。」
「どうぞ」

女神——柊木華香は受付係によって開かれたドアの先を目指し、歩いた。受付係は足早にその場を離れ、この部屋には二人がのこった。どこかで見たことのある景色が目を覆う。暗い部屋。不気味に揺れるろうそくの火。そして、黒い革製のソファ。

「ここに樹奈がいたのね。裏切り者の死神」
「おいおい、裏切り者はないだろう。ああ確かに樹奈は居たさ。もうここにはいないけどな」
「貴方は裏切り者よ。彼の想いをひねりつぶしたくせに。よく言うわ」
「裏切り者はお前だろう。お前は神のハーフを産んだんだ。あいつにはれっきとした婚約者がいたのに……」

Re: 神的少女は殺戮がお好き【とうとう十一章!】 ( No.140 )
日時: 2011/11/27 14:35
名前: 奈美 ◆a00JQBXv3o (ID: m3TMUfpp)

華香は顔色を変えた。

「婚約者? 彼はそんなこと話してくれなかったわ」
「ああ。あいつは結婚をしたくないと言っていた。だから人間界で学びたいと訴え、この世界に降り、お前を見つけたんだろう」
「じゃあ私は、人間界にいる口実のようなものだったのね!?」

華香は声を荒げた。

「違う。それは違うんだ。あいつはお前を心から愛していたんだ! ただ——人間のお前がいない中、樹奈を育てる自信がないと言っていた」
「来やすく樹奈なんて言わないで! 貴方に私の娘の名を呼ぶ資格なんてない! 私の娘を、樹奈を、いいように利用して! それに……記憶まで操って」

華香からその言葉が出たとき、死神は硬直した。沈黙がおきる。死神が言い訳を言う前に、先手を打つ。